選考対策 / 職務経歴書
うまくいかなかった仕事を書くべきか
職務経歴書の相談で、たびたび出る質問です。
「途中で止まった事業や、指摘を受けた案件は、書かないほうがよいですか」
結論から言うと、書けます。ただし、書ける類型と、書かないほうがよい類型があります。
そして、書くかどうかより、書き方のほうが結果を左右します。うまくいかなかった話は、型に沿って書けば、判断力の記述になります。型から外れると、言い訳の記述になります。
この記事では、その線引きと型を扱います。書類全体の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本にあります。
結論:3条件を満たすなら、書く
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| ① 事実で書ける | 何が起きたかを、評価を交えずに書ける |
| ② 自分の関与が明確 | 自分が何を判断し、何をしたかが書ける |
| ③ その後の対処がある | 直したこと、次に変えたことがある |
この3つが揃えば、書いてよいです。揃わないものは、書かないでください。
とくに③が無いものは、書かないほうがよいです。「大変でした」で終わる記述になります。
監査の仕組みは、直すことを前提に置かれています
そもそも、役所は「うまくいかなかったことを見つけて直す」仕組みを内部に持っています。
地方自治法第199条第1項は、監査委員が財務に関する事務の執行および経営に係る事業の管理を監査すると定めています。そして同条第3項は、監査にあたって、
> 第二条第十四項及び第十五項の規定の趣旨にのつとつてなされているかどうかに、特に、意を用いなければならない
としています。第2条第14項は「最少の経費で最大の効果」、第15項は「組織及び運営の合理化」です。
つまり、効率と合理性の観点から点検を受け、指摘があれば直すという循環が、法律の中に組み込まれているわけです。
指摘を受けること自体は、異常な事態ではありません。むしろ、指摘を受けて直した経験は、その循環を回した経験です。
民間の内部監査や、品質の管理の是正の措置と、同じ構造です。
書ける4つの類型
| 類型 | 書き方の例 |
|---|---|
| 見積りが外れた | 利用の見込みを過大に見積もり、実績が計画を下回った。要因を分析し、次年度の算定の方法を変更 |
| 調整が通らなかった | 関係課の合意が得られず、当初の案を修正。対象の範囲を限定して実施 |
| 期限に間に合わなかった | 移行の作業で不整合が判明し、稼働を延期。原因を特定して再実施 |
| 指摘を受けた | 監査の指摘を受け、確認の手順を見直し。チェックの項目を様式化 |
どれも、「起きたこと」と「その後」がセットになっています。
書き方の型
4つの要素を、この順で書いてください。
| 順 | 要素 | 書くこと |
|---|---|---|
| 1 | 状況 | 何を目指し、どういう条件だったか(1〜2行) |
| 2 | 自分の判断 | そのとき自分が何を選んだか |
| 3 | 結果 | 何が起きたか(評価語を使わない) |
| 4 | 変えたこと | その後、何を直したか(ここを厚く) |
悪い例
> 事業の利用が想定を下回り、目標を達成できませんでした。周知が不足していたことが原因と考えています。
2と4が無く、原因が外向きです。
良い例
> 新規の事業について、類似の事業の実績から利用の見込みを年間約◯件と算定し、予算と人員を配置。実績は約◯件にとどまった。>> 算定にあたって、対象者の条件が類似の事業より狭いことを考慮していなかったことを、実績の分析で特定。次年度の算定からは、対象者の数を要件ごとに推計する方法に変更し、見込みと実績の差を約◯割まで縮小。
同じ話ですが、4が厚く書かれています。
「見込みと実績の差を縮小した」という部分が、成果です。
書かないほうがよい類型
| 書かない | 理由 |
|---|---|
| 懲戒や処分に関わること | 職務経歴書に書く事項ではない |
| 訴訟や係争中の案件 | 内容を書けない。触れないのが確実 |
| 他人の失敗 | 自分の判断が書けない。印象も下がる |
| 守秘に触れる事案 | 地方公務員法第34条の義務は退職後も続く |
| 組織や上司への不満 | 面接での評価が最も下がる類型 |
「他人の失敗」は、とくに注意が要ります。「前任者の引継ぎが不十分で」という書き方は、面接で同じことを次の職場でも言う人として読まれます。
「止まった事業」は、判断として書ける
着手したが、途中で中止や凍結になった事業を担当していた方は多いはずです。これは、失敗とは別の類型です。
補助の要件が変わった、国の制度が見直された、用地の取得が進まなかった、社会の状況が変わった。外の条件の変化で止まる事業は、珍しくありません。
書くときは、止まった理由と、止めるまでに自分が何を判断したかを書いてください。
> 事業の着手後、◯◯の見込みが立たなくなったため、継続と中止の両案について、それぞれの費用と影響を整理。中止を選択した場合に必要な手続きと、関係者への説明の方法を整理したうえで、中止の方針を決定。既に支出した経費の取扱いについて、補助の所管と協議し、返還を回避。
続けるより、止めるほうが難しい判断です。民間でも、撤退の判断ができる人は評価されます。この類型は、③の対処が明確なので、書きやすい部類に入ります。
職務経歴書に書くか、面接で話すか
分量の目安があります。
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 職務経歴書 | 1件まで。実績欄の中に、対処とセットで3〜4行 |
| 面接 | 聞かれたら1件。4要素で、2分以内 |
| 志望動機 | 書かない。不満と読まれる |
職務経歴書に入れるなら、実績欄の最後に置いてください。成功した実績の前に置くと、そこで読む気が落ちます。
経験の言い換えから相談することもできます。
よくある失敗
1. 原因を外に置く
「周知が不足していた」「協力が得られなかった」。自分の判断のどこに手が入ったかを書いてください。
2. 対処を書かない
③が無いものは書かない。苦労話になります。
3. 評価語を使う
「大失敗」「痛恨の」。事実で書いてください。
4. 複数の失敗を並べる
1件で足ります。複数書くと、傾向として読まれます。
5. 他人の関与を書く
自分の範囲だけを書いてください。
6. 面接で「特にありません」と答える
用意しておけば、具体的に話せる質問になります。
まとめ
- ①事実で書ける ②自分の関与が明確 ③その後の対処があるの3条件が揃うなら、書けます
- 地方自治法第199条第1項・第3項は、監査にあたって第2条第14項・第15項の趣旨にのっとっているかに特に意を用いるとしています。点検と是正は制度に組み込まれています
- 書ける類型は、見積りが外れた/調整が通らなかった/期限に間に合わなかった/指摘を受けたの4つです
- 書き方は、状況 → 自分の判断 → 結果 → 変えたことの順。4番目を厚くします
- 懲戒・訴訟・他人の失敗・守秘に触れる事案・組織への不満は書きません
- 職務経歴書に入れるなら1件まで。面接でも1件、2分以内です
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よくある質問
監査で指摘を受けた案件は、書いてよいのですか
指摘を受けた事実と、その後の対処は書けます。監査の結果は、公表されているのが通常です。ただし、公表されている範囲を超えて、個別の経緯を書く必要はありません。書くなら、「確認の手順に不備があり、指摘を受けた。手順を見直し、チェックの項目を様式化して再発を防止」という形で、自分が直した部分に重心を置いてください。なお、他の職員の行為に関わる指摘については、書かないでください。自分が担当していた範囲の手順の話にとどめるのが確実です。
異動してきた時点で、すでに問題が起きていた案件です
引き継いだ状況として書けます。書き方は、前任者を評価しないことです。「着任時点で、◯◯の処理が滞留していた」という事実の記述にとどめ、自分が何をしたかを書いてください。「滞留していた◯件について、処理の順番を金額と経過の期間で区分し、◯か月で解消。滞留が生じないよう、月次で件数を確認する運用を導入」という形です。引き継いだ問題を解消した経験は、民間の中途採用でよく求められる形です。入社後に、同じように引き継ぐ場面があるからです。前任者の話をしないまま、成果だけを書けます。
面接で「その失敗から何を学びましたか」と聞かれたら
学びを抽象的に語らないでください。「確認の大切さを学びました」という答えは、ほとんど情報がありません。答えるのは、その後に自分が変えた具体的な行動です。「以降は、見込みの数字を作るときに、前提となる条件の違いを一覧にしてから算定するようにしています」という形です。行動が変わったことが示せれば、それが学びの証明になります。加えて、その行動を、次の職場でも取る意思を1行添えると自然につながります。面接での答え方は自己PRの作り方|公務員の実績を民間の言葉にするの考え方とも重なります。