選考対策 / 退職と在職中の進め方
引き止められたときの対応
退職を伝えると、引き止められることがあります。
「もう少し考えてみないか」「次の異動で希望の部署に行けるようにする」「来年度は昇任の見込みがある」
引き止めがあること自体は、珍しくありません。人が抜ければ、業務の割り振りをやり直す必要があるからです。
この記事では、提示される条件の性質と、検討するかどうかの判断を扱います。伝え方は退職を切り出すタイミングと相手にあります。
人事の権限は、任命権者にあります
提示された条件を検討するとき、確認すべき点があります。
地方公務員法第17条第1項です。
> 職員の職に欠員を生じた場合においては、任命権者は、採用、昇任、降任又は転任のいずれかの方法により、職員を任命することができる。
任命は、任命権者が行います。
つまり、直属の上司や課長が「異動させる」と述べても、それは任命の決定ではありません。
意向を伝えることはできても、決めるのは任命権者です。
引き止めの場で提示される条件は、多くの場合、確約ではなく見込みです。
この点を理解したうえで、検討してください。
提示されやすい条件
| 条件 | 性質 |
|---|---|
| 異動の希望を通す | 任命権者の判断。確約ではない |
| 昇任の見込み | 同上。選考や評価の結果による |
| 業務の負担の軽減 | 所属の判断で調整できることがある |
| 働き方の運用 | 所属の運用で変えられる場合がある |
| 処遇 | 条例に基づくため、個別の調整は困難 |
3つ目と4つ目は、所属の判断で実現しやすい部分です。
1つ目と2つ目は、見込みにとどまります。
5つ目は、制度上、個別の調整ができません。地方自治法第204条の2により、給与その他の給付は条例に基づいて支給されます。
検討するかどうかの判断
| 問い | 判断 |
|---|---|
| 提示された条件で、辞める理由が解消するか | 解消しないなら、検討の余地は小さい |
| その条件は、確約か見込みか | 見込みなら、実現しない可能性がある |
| 実現する時期はいつか | 次年度以降なら、それまで待てるか |
| 応募先への影響はどうか | 受諾後であれば、辞退の影響が生じる |
1つ目が出発点です。
辞める理由が「担当する分野を選べない」であれば、異動の希望が通ることで解消する可能性があります。
一方、「制度を運用する側ではなく、作る側で働きたい」であれば、庁内の異動では解消しません。
自分の理由が、どちらの型かを先に確かめてください。
受諾の前か後かで、重さが違う
| 段階 | 扱い |
|---|---|
| 内定の受諾前 | 検討して差し支えありません |
| 受諾した後 | 辞退の影響が生じます |
| 入社の直前 | 避けてください |
受諾した後に残る判断をすると、応募先は採用の計画をやり直すことになります。
だから、迷いがあるうちは受諾しない。これが基本です。
扱いは内定辞退の伝え方にあります。
断るときの伝え方
検討したうえで、意思が変わらない場合の伝え方です。
> ご配慮いただき、ありがとうございます。検討いたしましたが、退職の意思は変わりません。◯月◯日での退職について、引き続きご相談させていただければと思います。
3文で足ります。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 曖昧にして先延ばしにする | 意思が変わらないことを明確に |
| 条件を比較して説明する | 比較の中身を述べる必要はありません |
| 感謝を述べない | 配慮への謝意は添える |
1つ目を避けてください。
曖昧にすると、引き止めが続きます。結果として、引継ぎの調整が進みません。
引き止めが長引く場合
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 何度も面談が設定される | 意思を明確に伝え、日程の相談に移す |
| 書面を受け取ってもらえない | 人事の担当に相談 |
| 退職日の変更を求められる | 引継ぎの都合なら調整、それ以外は理由を確認 |
| 周囲から説得される | 個別に応じる必要はありません |
2つ目について補足します。
退職の意思表示の経路は、所属の規程で定められています。
上司が受け取らない場合でも、規程に従った提出の方法があります。人事の担当に相談してください。
見込みを、確度の高い形にする方法
残ることを検討する場合、提示された条件の確度を上げられるかを確認してください。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 時期を特定する | 「次の異動で」ではなく、いつの内示か |
| 範囲を特定する | 「希望を考慮する」ではなく、どの部署か |
| 経路を確認する | 人事の担当にも共有されているか |
| 記録を残す | 面談の内容を自分で書き留める |
3つ目が、いちばん実務的です。
所属の長が人事の担当に意向を伝えているかどうかで、実現の確度が変わります。
確認の仕方は、「人事にもお伝えいただけますか」と述べるだけで足ります。
なお、確度を上げられない場合でも、それは相手の誠実さの問題とは限りません。任命は任命権者が行うため、現場の管理職に確約する権限がないというだけです。
その前提で、待てるかどうかを判断してください。
引き止めを受けないために
事前にできることもあります。
| 準備 | 効果 |
|---|---|
| 入社日を確定させてから伝える | 日程が動かないことが伝わる |
| 引継ぎの計画を用意する | 業務の心配が減る |
| 意思を明確に述べる | 相談の余地があると受け取られない |
3つとも、伝える場面での工夫です。
「考えている段階です」と述べると、説得の対象になります。
経験の言い換えから相談することもできます。
判断に要する時間は、長くても数日です。応募先への回答の期限もあるため、1週間以上かけないほうが確実です。
よくある失敗
1. 曖昧に返事をする
引き止めが続きます。
2. 提示された条件を、確約だと受け取る
任命は任命権者が行います。
3. 受諾した後に残る判断をする
応募先の計画に影響します。
4. 辞める理由が解消するかを確かめない
1年後に同じ状況になります。
5. 感謝を述べない
配慮への謝意は添えてください。
6. 「考えている段階」と伝える
説得の対象になります。
まとめ
- 地方公務員法第17条第1項は、任命権者が採用・昇任・降任・転任のいずれかの方法により任命するとしています。上司の言葉は、任命の決定ではありません
- 提示される条件のうち、異動と昇任は見込み、業務の負担と働き方の運用は所属の判断で調整できることがあります
- 処遇は条例に基づくため、個別の調整は困難です
- 判断の出発点は、その条件で辞める理由が解消するかです
- 受諾の前か後かで重さが違います。迷いがあるうちは受諾しないでください
- 曖昧に返事をしない。引き止めが続き、引継ぎの調整が進みません
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よくある質問
「あと1年待てば昇任できる」と言われました
確約かどうかを確認してください。昇任は、選考や人事評価の結果にもとづいて行われるのが通常です。地方公務員法第21条の3は、昇任を能力の実証にもとづき、適性を有すると認められる者の中から行うとしています。したがって、「来年は昇任する」という言葉が、そのまま実現するとは限りません。確認するなら、選考の要件を満たしているか、いつ結果が出るかを聞いてください。そのうえで、1年待てるかを自分で判断してください。なお、応募先が1年待てることは、まずありません。
引き止めの条件を、応募先に伝えるべきですか
伝える必要はありません。応募先にとって、現職の条件は判断の材料になりません。ただし、受諾の前に迷いが生じた場合は、回答の期限を相談してください。「もう少し検討させていただきたい」と伝えれば足ります。理由を詳しく述べる必要はありません。なお、引き止めの条件を持ち出して、応募先に条件の上積みを求めるのは避けてください。交渉の材料として使うと、入社後の関係に影響します。条件の相談は、条件交渉はどこまでできるかの考え方に沿って行ってください。
残ることにした場合、周囲との関係はどうなりますか
多くの場合、日常に戻ります。役所では、退職を検討して残る職員は珍しくありません。ただし、伝えた範囲で情報が広がっている場合、しばらくは話題になることがあります。対処としては、残る判断をした旨を、伝えた相手に自分から伝えることです。「ご配慮いただいた条件を踏まえて、引き続き勤務させていただきます」という形です。曖昧にすると、周囲が扱いに困ります。なお、残る判断をした場合も、整理した内容は無駄になりません。自分が何を重く見ているかは、次の判断のときにも使えます。