選考対策 / 退職と在職中の進め方
在職中の転職活動で守るべきこと
在職中の転職活動は、制度上、認められています。
職業選択の自由は、憲法第22条第1項に定められています。転職を検討すること自体に、問題はありません。
ただし、在職している以上、守るべき線があります。
この記事では、その3つの線を扱います。連絡の実務は連絡手段と、職場に知られないための注意にあります。
線を越えた場合の帰結
まず、守るべき理由を確認します。
地方公務員法第29条第1項です。
> 職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。>> 一 この法律(中略)又はこれらに基づく条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合>> 二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
法令や規程に違反した場合、職務上の義務に違反した場合。
転職活動そのものは、これに当たりません。
問題になり得るのは、活動の方法です。勤務時間中に行う、職場の資源を使う、情報を持ち出す。これらは、別の問題です。
守るべき3つの線
| 線 | 根拠 | 具体 |
|---|---|---|
| ① 勤務時間 | 地方公務員法第35条(職務に専念する義務) | 勤務時間中に活動しない |
| ② 職場の資源 | 服務、情報セキュリティの方針 | 端末、メール、印刷を使わない |
| ③ 情報の取扱い | 地方公務員法第34条(守秘義務) | 職務上の情報を持ち出さない |
3つとも、転職活動に特有の話ではありません。
在職中、常に守るべきことです。
①——勤務時間
地方公務員法第35条は、勤務時間と注意力のすべてを職責の遂行に用いることを求めています。
| ✕ | ○ |
|---|---|
| 勤務時間中に求人を見る | 勤務時間外に見る |
| 勤務時間中に応募先と連絡 | 昼休みか、勤務時間の後 |
| 勤務時間中に書類を作る | 自宅で作る |
| 勤務時間中に面接を受ける | 休暇を取得する |
4つ目について補足します。
平日の日中に面接を受ける場合、年次休暇を取得してください。
休暇は、理由を問わず取得できるのが原則です。「私用」で足ります。
組み方は平日日中の面接をどう調整するかにあります。
②——職場の資源
| 資源 | 理由 |
|---|---|
| 業務用の端末 | 業務のために貸与されています |
| 職場のメール | 同上。記録が残る仕組みがあります |
| 印刷の設備 | 業務用の消耗品です |
| 業務用の電話 | 同上 |
| 執務室 | 画面越しの面接に使わない |
5つとも、私的な用途に使うことは、服務の観点で問題になり得ます。
加えて、情報セキュリティの方針で、閲覧や通信の記録が管理されていることがあります。
業務用の端末で求人サイトを見ることは、避けてください。
③——情報の取扱い
地方公務員法第34条第1項は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならないとし、その職を退いた後も同様としています。
| 場面 | 注意 |
|---|---|
| 職務経歴書 | 個別の案件が特定できる記述をしない |
| 面接 | 内部の検討の経緯を話さない |
| 画面越しの面接 | 背景や画面の共有に、職務の情報が映らないように |
| 資料 | 職務の資料を私物の端末に置かない |
| 退職後 | 義務は続きます |
4つ目が、実務上いちばん起こりやすいです。
自宅で書類を作るときに、職場の資料を持ち帰ってはいけません。
書けるのは、公表されている数字と、自分が使った方法です。
職務経歴書を作るときの線
書類を作る作業で、いちばん線に触れやすいです。
| ✕ 書かない | ○ 書ける |
|---|---|
| 特定の事業者名、施設名 | 業種と規模 |
| 個人が特定できる事案 | 事案の類型と件数 |
| 未公表の内部の数値 | 公表されている統計や決算の数字 |
| 内部の検討の経緯 | 自分が使った方法と、決めた範囲 |
判断の目安は、「どこで」ではなく「どうやって」で書くことです。
方法と、自分の判断の範囲は、守秘の対象ではありません。
副業・兼業との違い
転職活動と、副業や兼業は別の話です。
地方公務員法第38条第1項は、任命権者の許可を受けなければ、営利企業の役員を兼ねたり、報酬を得て事業や事務に従事したりしてはならないとしています。
| 行為 | 扱い |
|---|---|
| 求人を見る、応募する | 許可は不要 |
| 面接を受ける | 許可は不要 |
| 内定を受諾する | 許可は不要 |
| 退職日の前に就業する | 許可が必要な場合があります |
| 報酬を受け取る | 同上 |
4つ目と5つ目に注意してください。
入社日を退職日の翌日以降にしていれば、この問題は生じません。
研修や説明会への参加を、退職日の前に求められた場合は、報酬の有無と、所属の規程を確認してください。
判断に迷う場合は、人事の担当に相談するか、応募先に時期の調整を相談してください。
応募先に伝えてよいこと
| 内容 | 可否 |
|---|---|
| 担当してきた業務の内容 | 可(一般的な範囲で) |
| 制度の仕組み | 可(公表されている範囲) |
| 扱った件数の概数 | 可 |
| 個別の案件の詳細 | 不可 |
| 内部の方針や検討の経緯 | 不可 |
面接で詳しく聞かれた場合も、この線は変わりません。
「その件は、職務上の守秘に関わりますので、一般的な範囲でお答えします」と述べて差し支えありません。
この線を守れること自体が、評価の対象になります。
経験の言い換えから相談することもできます。
なお、入社前の課題や事前学習を求められることがあります。報酬を伴わない自習であれば、通常は問題になりませんが、勤務時間中に行わないでください。
よくある失敗
1. 勤務時間中に応募先と連絡する
職務に専念する義務があります。
2. 職場の端末で求人を見る
記録が残る仕組みがあります。
3. 職務の資料を自宅に持ち帰る
守秘の義務に関わります。
4. 画面越しの面接を職場から受ける
背景と音声で線を越える可能性があります。
5. 個別の案件を面接で話す
一般的な範囲にとどめてください。
6. 知られることを過度に心配する
線を守るほうが重要です。
まとめ
- 地方公務員法第29条第1項は、法令等への違反や職務上の義務違反を懲戒の事由としています。転職活動そのものは、これに当たりません
- 守るべき線は、①勤務時間 ②職場の資源 ③情報の取扱いの3つです
- 平日の面接は、年次休暇を取得してください。理由は「私用」で足ります
- 業務用の端末、メール、印刷の設備は使わないでください
- 職務の資料を私物の端末に置かない。書けるのは、公表されている数字と自分が使った方法です
- 知られることを過度に心配するより、線を守るほうが重要です
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よくある質問
昼休みに応募先と連絡するのは問題ありますか
休憩の時間であれば、私的な用事に使えるのが原則です。ただし、場所には注意してください。執務室での通話は、周囲に内容が聞こえます。外に出るか、人のいない場所を選んでください。また、業務用の電話や端末は使わないでください。私物の端末を使う場合も、職場の通信の設備に接続しないようにしてください。なお、昼休みに来る連絡に出られないことは、応募先に伝えておけば調整されます。「平日の日中は出られないことがあります」と先に伝えてください。
上司に活動を知られた場合、どうなりますか
それ自体が服務上の問題になるわけではありません。職業選択の自由があり、転職の検討は職員の権利の範囲内です。ただし、業務への影響を心配されることはあります。その場合、業務は通常どおり担っていることを示すのがいちばんの答えです。なお、知られた時点で、意思が固まっているなら、改めて正式に伝えるほうが整理がつきます。中途半端な状態が続くと、周囲も扱いに困ります。伝え方は退職を切り出すタイミングと相手にあります。
応募先から、現在の業務について詳しく聞かれました
一般的な範囲で答えてください。業務の内容、担当してきた機能、扱った件数の概数。これらは答えられます。一方、個別の案件の内容、内部の検討の経緯、未公表の数値は答えられません。聞かれた場合は、「職務上の守秘に関わるため、一般的な範囲でお答えします」と述べれば足ります。この対応で、選考が不利になることはありません。むしろ、線を守れる人として受け取られます。なお、しつこく個別の情報を求められる場合は、応募先の姿勢として気に留めておいてください。