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交渉と調整|庁内調整の経験を民間で言語化する
「庁内調整ばかりで、外に出せる経験がない」というご相談を伺います。
その調整こそが、持ち運べる経験です。
この記事では、理由と、言語化の仕方を扱います。
所掌が分かれていることが、調整を生みます
地方自治法第138条の3第1項です。
> 普通地方公共団体の執行機関の組織は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、それぞれ明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関によつて、系統的にこれを構成しなければならない。
同条第2項です。
> 普通地方公共団体の執行機関は、普通地方公共団体の長の所轄の下に、執行機関相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。
同条第3項です。
> 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の執行機関相互の間にその権限につき疑義が生じたときは、これを調整するように努めなければならない。
所掌事務と権限が明確に分かれ、そのうえで一体として機能することが求められる。
この構造が、調整を必要とします。
そして、条文自体が「調整」という言葉を使っています。
つまり、調整は、制度が予定している働きです。
付随的な雑務ではありません。
調整の型
調整には、繰り返される手順があります。
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 関係者を洗い出す |
| 2 | それぞれの前提を確認する |
| 3 | 譲れない点を見分ける |
| 4 | 落としどころを設計する |
| 5 | 順序を決めて当たる |
| 6 | 合意の内容を記録に残す |
2と3が中心です。
相手が反対している理由は、多くの場合、立場に基づく前提です。
所掌の範囲、予算の制約、過去の経緯、上位の方針。
この前提を確認せずに説得しても、動きません。
5について。
誰から当たるかで、結果が変わることがあります。
この順序の設計は、経験によって身につくものです。
交渉との違い
| 項目 | 交渉 | 調整 |
|---|---|---|
| 相手 | 利害が対立する外部 | 同じ組織の中 |
| 目的 | 条件を決める | 全体として動く形を作る |
| 関係 | 一時的なこともある | 続く |
| 勝敗 | 生じることがある | 生じさせない |
| 記録 | 契約書 | 決裁、議事の記録 |
4行目です。
調整では、勝ち負けを作らないことが要点になります。
相手が後から協力しなくなると、次の案件で困るためです。
この感覚は、民間の部門間の調整でも同じです。
書き方の例
悪い例
> 関係課との調整を担当しました。
良い例
> ◯◯の事業の実施にあたり、関係する◯課との調整を担当。各課の所掌と制約を確認したうえで、費用の負担と事務の分担について◯案を作成し、順序を決めて協議。◯か月で合意に至り、内容を決裁の文書と要綱に反映。
「相手の数」「確認」「案の作成」「順序」「期間」「記録」が入っています。
基本の型は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。
言い換えの対応
| 行政の言葉 | 民間での読まれ方 |
|---|---|
| 庁内調整 | 部門間の調整 |
| 関係課との協議 | 関係部署との合意の形成 |
| 合議 | 承認の取り付け |
| 根回し | 事前の合意の形成 |
| 決裁の取得 | 承認の手続 |
| 他団体との協議 | 社外との調整 |
| 事務の分担の整理 | 役割の定義 |
4行目です。
「根回し」は、民間では「事前の合意の形成」として読まれます。
否定的な言葉として使わないでください。
会議の前に論点を詰めておくという動作は、どの組織でも必要とされます。
どの転職先で効くか
| 領域 | 使いどころ |
|---|---|
| ① 行政が相手の事業 | 庁内の動き方が分かる |
| ② 事業の推進・企画 | 部門間の調整 |
| ③ 受託の管理 | 発注者との協議 |
| ④ 導入の支援 | 顧客の社内の合意の形成 |
| ⑤ 管理部門 | 全社の調整 |
④について。
システムやサービスの導入では、顧客の社内で合意を作る必要があります。
誰の承認が要るか、誰が反対しそうか、どの順で当たるか。
この設計ができる人は、導入の支援で重宝されます。
探し方は公務員経験が活きる求人の探し方に整理しています。
面接で聞かれやすいこと
| 質問の趣旨 | 用意しておくこと |
|---|---|
| 難しかった調整 | 3件、争点と結論 |
| 相手の数 | 関係した課・団体の数 |
| 期間 | どれだけかかったか |
| 反対された場合の進め方 | 前提の確認の仕方 |
| 記録の残し方 | 合意をどう固定したか |
4行目です。
反対された案件をどう進めたかは、必ず用意しておいてください。
説得したのではなく、前提を確認して案を作り直したという説明のほうが、実務に近く読まれます。
なお、特定の事案が分かる説明は避けてください。
守秘の義務は、退職した後も続きます。
経験の言い換えから相談することもできます。
学ぶ前に考えること
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| ① すでにある経験 | 調整した案件を3件 |
| ② 争点の類型 | 費用、分担、時期、責任 |
| ③ 応募したい求人の条件 | 調整の経験が挙がっているか |
| ④ 期限 | 応募の時期までに間に合うか |
①を先に整理してください。
研修や資格より、実際の案件の整理が効きます。
なお、講座を受ければ転職できる、という関係にはありません。
何を争点とし、どう合意を作ったかが、評価の対象です。
よくある失敗
1. 「庁内調整」で止める
中身を開いて書いてください。
2. 相手の数を書かない
規模が伝わりません。
3. 期間を書かない
難易度が伝わりません。
4. 争点を書かない
民間と共通する部分です。
5. 「根回し」を否定的に語る
事前の合意の形成として読まれます。
6. 説得したと書く
前提を確認して案を作り直したほうが実務に近いです。
7. 記録の残し方に触れない
合意の固定は重要な工程です。
8. 講座を受ければ進めると考える
どう合意を作ったかが評価の対象です。
まとめ
- 地方自治法第138条の3は、明確な範囲の所掌事務と権限を有する執行機関による系統的な構成、相互の連絡を図り一体として行政機能を発揮すること、長による権限の疑義の調整を定めています
- 所掌が分かれている構造が、調整を必要とします。調整は、制度が予定している働きです
- 調整の型は、①洗い出し ②前提の確認 ③譲れない点 ④落としどころ ⑤順序 ⑥記録です
- 相手の数と、期間、争点を書いてください
- 「根回し」は、事前の合意の形成として読まれます
- 説得したのではなく、前提を確認して案を作り直したという説明のほうが実務に近いです
- 民間では、決める人がはっきりしていることがあります。当たる順序と範囲が変わります
行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。
よくある質問
調整の相手が課内だけでも、書けますか
書けます。係と係の間、担当と上司の間でも、前提を確認し、案を作り、合意を得るという動作は同じです。書き方は、「係間で事務の分担に差が生じていた◯◯の業務について、処理の状況を整理したうえで分担の案を作成し、係長の承認を得て運用を変更」という形です。規模より、手順が伝わるかが重要です。なお、外部との協議の経験があれば、併せて書いてください。事業者、他団体、関係機関。相手の種類が増えるほど、範囲の広さが伝わります。
反対されて進まなかった案件は、書けますか
書けます。進まなかった理由を説明できるなら、判断の経験になります。「◯◯の案について、◯課と協議したが、制度上の制約により実現が難しいと整理。代替として◯◯の方法を提案し、一部を実施」という形です。全部が実現しなくても、整理した過程が残ります。なお、「反対されたので諦めた」で止めないでください。何を確認し、何が分かり、次にどうしたか。この3点があれば、成果として読まれます。面接でも、うまくいかなかった案件は聞かれます。用意しておいてください。
民間では、調整の経験をどう評価されますか
職種によって扱いが変わります。事業の推進、導入の支援、受託の管理、管理部門では、調整が業務の中心になります。この場合、直接の経験として読まれます。一方、個人で完結する業務が中心の職種では、評価の比重が下がることがあります。判断の目安は、求人票の応募条件です。「関係部署との調整」「社内外の折衝」「プロジェクトの推進」といった言葉があれば、調整の経験が要件になっています。読み方は求人票の読み方|どこを見れば実態が分かるかに整理しています。