自治体別 / 市
西尾市職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
西尾市と茨城県日立市は、同じ類似団体類型区分で、地域手当もどちらも10%。平均年齢は44.3歳と43.9歳で0.4歳しか違いません。
総額の差は8,109円。そのうち8,500円が給料月額の差です。
この連載では「揃えても差が残る」と書き続けてきましたが、今回はその逆になります。この回で、そこを開きます。
西尾市の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、西尾市の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 西尾市 |
|---|---|
| ラスパイレス指数 | 99.2 |
| 平均年齢 | 44.3歳 |
| 平均給料月額 | 328,700円 |
| 諸手当月額 | 96,647円 |
| 平均給与月額 | 425,347円(同じ類型の72団体で5番目) |
| 平均給与月額(国ベース) | 393,950円 |
| 地域手当(国の指定基準) | 10% |
| 地域手当(実際の支給割合) | 10% |
諸手当は総額の22.7%を占めます。
日立市と並べる
類似団体類型区分(人口と産業構造による区分)は、どちらもⅣ-2。地域手当も、どちらも10%です。
| 項目 | 西尾市 | 日立市 | 差 |
|---|---|---|---|
| 平均年齢 | 44.3歳 | 43.9歳 | 0.4歳 |
| 地域手当(実支給) | 10% | 10% | 一致 |
| ラスパイレス指数 | 99.2 | 98.3 | 0.9ポイント |
| 平均給料月額 | 328,700円 | 320,200円 | 8,500円 |
| 諸手当月額 | 96,647円 | 97,038円 | 391円 |
| 地域手当以外(概算) | 63,777円 | 65,018円 | 1,241円 |
| 平均給与月額 | 425,347円 | 417,238円 | 8,109円 |
総額の差8,109円に対して、給料月額の差は8,500円。ほぼそのままです。
8,109円の中身を分解する
| 内訳 | 金額 | 向き |
|---|---|---|
| 給料月額の差 | 8,500円 | 西尾市が多い |
| 地域手当の差(概算) | 850円 | 西尾市が多い |
| 地域手当以外の手当の差(概算) | 1,241円 | 日立市が多い |
| 差し引き | 8,109円 | 西尾市が多い |
地域手当以外の差は1,241円しかありません。
そして年齢が近いので、佐賀市の回で示した並びもそのまま成り立ちます。指数は西尾市99.2、日立市98.3。指数の高いほうが、給料月額も高い。
県内の数字は愛知県職員の転職に、同じ類型の市は日立市職員の転職と豊川市職員の転職に整理しています。
市は、どういう団体か
西尾市は、中核市でも施行時特例市でもない市です。開発許可や建築確認をどこまで市が処理するかは、市によって扱いが異なります。保健所は設置しないので、食品衛生や感染症対策は都道府県の仕事として残ります。
ところが、町村との間にははっきりした線が1本あります。
社会福祉法第14条第1項は、都道府県及び市(特別区を含む)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければならないと定めています。一方、同条第3項では、町村は、条例で、その区域を所管区域とする福祉に関する事務所を設置することができるとされています。
市は必ず置く。町村は置いてもよい。ここが分かれ目です。
そして同条第6項によれば、市町村の福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に定める援護、育成、更生の措置に関する事務のうち、市町村が処理することとされているものをつかさどります。
6つの法律にまたがる給付と措置を、1つの事務所で扱う。これが、市になった団体に必ずある仕事です。
職務経歴書に書くときは、「市役所の仕事」ではなく、担当した事務の名前で書いてください。市の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。
市役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 市役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 地籍調査、境界の確認と立会 | 資産管理、権利調整、用地開発 |
| 都市計画、区画整理、駅周辺の整備 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 生活保護、児童・障害・高齢の措置 | ケース管理、審査業務、与信管理 |
| 課税・徴収、滞納整理 | 債権管理、与信、回収 |
| 農業・水産の生産と販路の支援 | 産地開発、商品企画、調達 |
| 合併後の制度統一、例規の整理 | 制度統合、規程整備 |
| 上下水道など公営企業 | インフラ運営、事業運営 |
| 市有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「台帳と実態のずれ」を、現地で直す実務
西尾市役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
国土調査法第1条は、この法律が、国土の開発及び保全並びにその利用の高度化に資するとともに、あわせて地籍の明確化を図るため、国土の実態を科学的且つ総合的に調査することを目的とすると定めています。
注目してほしいのは「地籍の明確化」という言葉です。
明確にする、と書いてあるということは、いまは明確ではない、ということです。
土地には登記簿があります。面積も、形も、そこに書かれています。ところが、その多くは昔の測量に基づいています。
実際に測ってみると、書かれている面積と合いません。そして隣の土地との境界が、どこなのかも、はっきりしないことがあります。
調べると、隣同士の言い分が食い違います。
実務は、次のような形になります。
- 現地で測り、台帳と突き合わせる
- ずれが見つかる
- 境界は、隣の人と一緒に確認しないと決まらない
- 立会いの日程を取り、双方が納得する線を探す
- 納得しない人がいると、そこだけ空白のまま残る
「記録と現実が違うことを、当事者の合意を取りながら直す」仕事です。
しかも、進みは遅い。1年でできる範囲は限られていて、全体が終わるまでに何十年もかかります。
企業でも、同じ構造の場面が増えています。
固定資産台帳と現物、在庫の帳簿と実地棚卸、顧客マスタと実際の取引先、社員名簿と実際の配置、契約書と運用の実態。どれも「合っているはず」の前提で動いています。
そして多くの企業で、こうなります。実地で確かめると、必ず差異が出ます。差異が出ると、原因を追い、直す作業が発生します。だから、確かめたがりません。
そして、差異を放置したまま何年も経つと、どこからずれたのかが分からなくなります。
求人票では、資産管理、内部統制、監査対応、業務設計、権利調整といった名前で書かれています。
書くときのこつは、地番や所有者を書かないことです。ずれをどうやって見つけたか、当事者の合意をどう取ったか、合意できなかったときどう扱ったか、そして限られた予算と人数で範囲をどう決めたか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
西尾で、どの経験が値になるか
1. 台帳と実態を突き合わせた経験
確かめれば差異が出ると分かっていて、それでも確かめた経験は、企業でほとんど誰も持っていません。
2. 当事者の合意を取りながら直した経験
記録を直すだけでは終わりません。相手がいる修正を進めた経験が値になります。
3. 合意できなかった部分の扱いを決めた経験
全部は終わりません。残し方を決めた経験が強く読まれます。
4. 何十年もかかる作業の範囲を決めた経験
限られた予算で、どこから手を付けるか。計画立案の実務と同じ構造です。
県内・県外の求人を見るときに
西尾市は愛知県の西三河地域にあり、名古屋圏を担当エリアとする求人が、通勤の範囲に入ります。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、リモート可や週数日出社の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、市役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「地籍調査を担当」では読み手に何も残りません。ずれをどう見つけ、当事者の合意をどう取ったか。
合意できなかった場面を書く
全員が納得することはありません。そのとき何をしたかを書けると、実務があったことが伝わります。
規模を必ず書く
市の人口、調査した面積、筆数、立会いの回数。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。市役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、電気主任技術者、建築基準適合判定資格者、補償業務管理士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
測量と権利を両方扱える技術者は、限られる
境界、面積、登記、立会い。現地と書類の両方を突き合わせた経験は、用地を扱う企業から求められます。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。調査や許認可に関わったなら、調査した面積、筆数、立会いの回数、予算の執行率で答えてください。「行政なので利益はありません」と答える必要はありません。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
市内の企業の多くは、市役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 西尾市の一般行政職はラスパイレス指数99.2、平均給与月額425,347円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 同じ類型・地域手当も同率10%・年齢差0.4歳の日立市とは、総額の差8,109円
- そのうち給料月額の差が8,500円。地域手当以外の差は1,241円しかありません
- この連載では「揃えても差が残る」と書き続けてきましたが、今回はその逆です
- つまり、差が残るかどうかは揃え方ではなく、どの2市を選ぶかで決まります
- 「記録と現実が違うことを、当事者の合意を取りながら直す」経験は、企業でほとんど誰も持っていません(国土調査法1条)
よくある質問
条件を揃えると、総額の差は給料月額で説明できるのですか
この2市ではそうなります。ただし同じ「地域手当を揃える」操作をしても、別の団体を選べば地域手当以外の差のほうが大きくなります。差が残るかどうかは揃え方の問題ではなく、どの2市を選ぶかで決まるということです。
総額が72団体で5番目なら、転職で有利ですか
団体の平均は、あなたの実額ではありません。西尾市の総額のうち、地域手当10%ぶんのおよそ32,870円は誰にでも同じ割合で付きます。人によって違うのは、引いた残りの63,777円(総額の15.0%)です。
諸手当22.7%のうち、自分に関係するのはどこですか
地域手当10%ぶんのおよそ32,870円を除いた、63,777円の部分です。総額に占める割合でいうと15.0%。割合は小さいほうなので、団体の平均と自分の額は近くなりやすい側です。ただし昇給すると地域手当も自動的に増えます。