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業界研究 / 不動産・デベロッパー

不動産・デベロッパーの年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

不動産・デベロッパーへの転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、不動産・デベロッパー業界の年収の相場やレンジは書いていません。会社の規模と職種(公民連携・事業企画か、営業か、開発か)で差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、不動産・デベロッパーに固有の働き方の構造(事業の周期の長さ、公民連携と営業で違う繁忙と休日、転勤、資格)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価は不動産・デベロッパーは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

不動産・デベロッパーは、土地を取得し、開発し、建物を売却または運用する事業が基本で、宅地建物取引業には免許(宅地建物取引業法第3条第1項)と事務所等ごとの宅地建物取引士の設置(同法第31条の3第1項)が要ります。自治体と向き合う領域(公有地の取得——財産の処分は条例または議会の議決、地方自治法第237条第2項——、PPP/PFI、公共施設の再編)は、会社によって規模も内容も違います。

処遇の観点で押さえておきたいのは、同じ会社の中でも、公民連携・事業企画、用地・開発、営業で処遇の設計が違うことが多い点です。営業には成果に連動するインセンティブが設計されている会社があり、公民連携・事業企画は固定の割合が高いことが多いですが、これは会社ごとに違います。財政課の方が応募する公民連携の枠が、どの処遇の体系に入るかを確かめるのが出発点です。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(不動産・デベロッパーを含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の会社は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与・インセンティブ期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項。制度がない会社もありうる(労働基準法施行規則第5条第5号)。営業には成果連動の設計がある会社がある
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項。制度がない会社もありうる(労働基準法第89条第3号の2)
休日条例で定める毎週少なくとも1回の休日または4週間に4日以上(労働基準法第35条)。住宅・商業の営業は土日が営業日で、休日が平日になる設計が多い
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)。外回りで算定し難いときは事業場外労働のみなし(第38条の2)がありうる
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

不動産・デベロッパーに固有の働き方——法律の側から読む

1つ目は、事業の周期の長さ。土地の取得から開発、竣工、売却・運用までは、案件によって数年の単位で動きます。公民連携の案件では、自治体側の手続き(用途廃止、議会の議決、PFIの事業者選定)と、自治体の会計年度の周期が加わり、自治体側の意思決定の時期に合わせて事業者側の作業が集中する構造があります。財政課の方は、この自治体側の周期(議会の日程、予算の年度、債務負担行為——地方自治法第214条——の設定)を内側から知っているので、公民連携の案件の繁忙の時期は読みやすいはずです。面接では「公民連携の案件は、自治体の議会の日程にどう合わせているか」を聞けば、具体的な答えが返ってきます。

2つ目は、公民連携と営業で違う繁忙と休日。住宅や商業の営業は、顧客が来る土日が営業日で、休日が平日になる設計が多いです。公民連携・事業企画は自治体が相手なので、自治体の開庁日(平日)に合わせた働き方が中心です。労働基準法第35条は毎週少なくとも1回の休日(または4週4日以上)を求めていますが、その休日が土日か平日かは会社と職種の設計です。公民連携の枠で入る前提なら、配属先の休日の設計を確かめてください。

3つ目は、転勤。大手のデベロッパーは全国に拠点があり、就業場所の変更の範囲(転勤)が広い契約になっていることがあります。労働基準法施行規則第5条第1号の3により、就業場所と業務の「変更の範囲」は労働条件の明示事項なので、通知書に書かれている範囲を確かめ、地域を限定したい場合は交渉の対象にします。

4つ目は、資格。宅地建物取引業者は事務所等ごとに宅地建物取引士を置く定めがあるので(宅地建物取引業法第31条の3第1項)、会社によっては資格手当を設け、入社後の取得を求めることがあります。公民連携・事業企画の枠で入る場合、取得が求められるか、資格手当の対象かを確かめます。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。——転勤の範囲と、業務の変更の範囲に「営業」や「開発」が含まれているか——公民連携・事業企画の枠で入ることを前提にしている場合、この範囲は交渉の対象です。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。——休日が土日か平日か、配属先の設計を確かめます。事業場外労働のみなしが適用される場合は、その旨が書かれているかを見ます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。月給か年俸か。インセンティブがある場合、指標と計算式が書かれているか。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。資格手当の対象を確かめます。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。第4号の2と第5号は「定めをする場合」の事項なので、書かれていなければ制度がない可能性があります。書かれていない場合は、就業規則を見せてもらい、制度の有無を確認してください。

条件の読み方や、どこまで交渉できるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。会社ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

デベロッパーは土日出勤が当たり前と聞きました。公民連携の枠でもそうですか

土日が営業日なのは、顧客が来る住宅・商業の営業の設計です。公民連携・事業企画は自治体が相手なので、自治体の開庁日(平日)に合わせた働き方が中心で、休日が土日の設計になっていることが多いです。ただし、同じ会社でも配属によって休日の設計が違うので、労働条件通知書の休日の記載(労働基準法施行規則第5条第2号)と、配属先の実際の設計を面接で確かめてください。「会社の働き方」ではなく「この枠の働き方」を聞くことが要点です。

宅地建物取引士を取らないと処遇が上がらないと言われました

宅地建物取引業者は事務所等ごとに宅地建物取引士を置く定めがあるので(宅地建物取引業法第31条の3第1項)、会社によっては資格手当を設け、入社後の取得を求めることがあります。公民連携・事業企画の枠で、取得が昇給や昇格の要件になっているかは会社ごとの評価制度によります。オファーの段階で「取得は必須か」「資格手当の額と対象」「取得しない場合の処遇への影響」を確かめ、就業規則や賃金規程の該当箇所を見せてもらってください。

市況が悪くなると、処遇はどう変わりますか

不動産・デベロッパーの業績は市況の影響を受け、賞与やインセンティブが業績に連動する設計の会社では、市況の変動が処遇に反映されます。公務員の給与が条例で決まり、景気の変動が直接には給与に反映されないのと違う点です。労働条件通知書と就業規則で、賞与の固定と変動の割合、変動の基準(会社の業績か、部門か、個人か)を確かめ、変動の部分を固定と思い込んで生活設計をしないことが要点です。解雇については労働契約法第16条により客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要りますが、処遇の変動と解雇は別の問題です。

出典

  1. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  2. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第214条(債務負担行為)/第237条(財産の管理及び処分)|e-Gov法令検索
  3. 宅地建物取引業法 第3条(免許)/第31条の3(宅地建物取引士の設置)|e-Gov法令検索
  4. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第35条(休日)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第38条の2(事業場外労働のみなし労働時間)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  5. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索
  6. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  7. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  8. 厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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