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業界研究 / 人材サービス

人材サービスの年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

人材サービスへの転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、人材サービス業界の年収の相場やレンジは書いていません。会社の規模と職種、そしてインセンティブの設計で差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、人材サービスに固有の働き方の構造(成果指標とインセンティブ、事業者側の許可と規制、自治体の年度の周期、営業の労働時間の扱い)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価は人材サービスは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

人材サービスの収益は、有料職業紹介では求人者(採用企業)からの手数料(職業安定法第32条の3第1項、求職者からは原則徴収不可——同条第2項)、労働者派遣では派遣先からの派遣料金、BPOでは委託料です。処遇の観点で押さえておきたいのは、この収益が個人の成約や受託と直接結びつくため、成果指標(KPI)とインセンティブが処遇の設計に組み込まれている会社が多い点です。固定の部分と変動の部分の割合は会社と職種で大きく違い、官公庁向けの営業とキャリアアドバイザーでも指標が違います。「業界の相場」を探すのではなく、応募先の職種の指標と変動の設計を先に見るのが出発点です。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(人材サービスを含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の会社は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与・インセンティブ期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項。制度がない会社もありうる(労働基準法施行規則第5条第5号)。成果に連動するインセンティブが賃金の決定・計算の方法として明示される(同条第3号)
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項。制度がない会社もありうる(労働基準法第89条第3号の2)
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)。外回りの営業で労働時間を算定し難いときは事業場外労働のみなし(第38条の2)がありうる
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

人材サービスに固有の働き方——法律の側から読む

1つ目は、成果指標とインセンティブ。成約数、受託額、面談数などの指標が設定され、処遇の一部が変動する設計の会社があります。労働基準法施行規則第5条第3号により、賃金の決定・計算の方法は労働条件の明示事項なので、変動の仕組み(指標、計算式、支払時期)が労働条件通知書に書かれているかを見ます。書かれていなければ、就業規則やインセンティブ規程を見せてもらいます。公務員の給与は条例で決まり、成果で変動する部分は限られた範囲でした。人材サービスでは変動の幅が大きい会社があるので、「提示された額のうち、どこまでが固定か」を分けて読んでください。

2つ目は、事業者側の許可と規制。有料職業紹介は厚生労働大臣の許可(職業安定法第30条第1項)、労働者派遣も厚生労働大臣の許可(労働者派遣法第5条第1項)が要り、許可の下で事業が運営されています。自分が入る会社がどの許可を持ち、どの事業を行っているかは、働き方(紹介の営業か、派遣のコーディネートか、BPOの運営か)を左右します。財政課の方は、自治体側で派遣と委託の契約を見てきたので、事業者側の許可と規制の構造は理解しやすいはずです。

3つ目は、自治体の年度の周期。官公庁向けの営業やBPOでは、自治体の会計年度(4月〜翌年3月)に合わせて、年度末に次年度の契約の提案と、会計年度任用職員(地方公務員法第22条の2)の募集の周知が重なる構造があります。複数年度のBPOは債務負担行為(地方自治法第214条)で組まれるので、「受託案件のうち複数年度の契約になっている割合」を聞けば、年度末の実態が具体的に分かります。民間向けの事業は年度の周期に縛られません。

4つ目は、営業の労働時間の扱い。外回りの営業で労働時間の全部または一部を事業場外で従事し、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす制度(労働基準法第38条の2)が適用されることがあります。ただし、携帯端末で随時指示を受けている場合など、労働時間を算定できる状況では適用されません。「みなし」が適用されていると言われた場合、自分の業務が本当に「算定し難い」状況かを確かめてください。なお、営業やキャリアアドバイザーの業務は、専門業務型裁量労働制の対象業務には含まれていません。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。人材サービスは支店が複数の地域にあることが多く、就業場所の変更の範囲(転勤)を見ます。業務の変更の範囲に「民間向けの営業」が含まれているかも確かめます。官公庁向けや公務員・行政領域の枠で入ることを前提にしている場合、この範囲は交渉の対象です。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。事業場外労働のみなしが適用される場合は、その旨が書かれているかを見ます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。月給か年俸か。インセンティブの指標、計算式、支払時期が書かれているか。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。第4号の2と第5号は「定めをする場合」の事項なので、書かれていなければ制度がない可能性があります。書かれていない場合は、就業規則を見せてもらい、制度の有無を確認してください。

条件の読み方や、どこまで交渉できるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。キャリアアドバイザーとして公務員出身者を支援する立場になる場合、この切替を自分で経験していることが、相談者への助言にそのまま効きます。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。会社ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

インセンティブが年収の半分近いと言われました。どう考えればよいですか

提示された額のうち、固定の部分と変動(インセンティブ)の部分を分けて読んでください。固定の部分だけを公務員の給与と比べ、変動の部分は達成できた場合の上乗せとして別に考えます。変動の指標(成約数か、受託額か、面談数か)、計算式、支払時期、達成できなかった場合の扱いを、労働条件通知書(労働基準法施行規則第5条第3号の賃金の決定・計算の方法)とインセンティブ規程で確かめてください。変動の部分を固定と思い込んで生活設計をするのが、典型的な読み違えです。

外回りの営業は「みなし労働時間」と言われました。残業代は出ないのですか

労働基準法第38条の2の事業場外労働のみなしは、労働時間の全部または一部を事業場外で従事し、労働時間を算定し難いときに所定労働時間労働したものとみなす制度です。携帯端末で随時指示を受けている、訪問先と時間が事前に決められて報告している、など労働時間を算定できる状況では適用されません。適用されると言われた場合、自分の業務が本当に「算定し難い」状況かを確かめ、労働条件通知書と就業規則の該当箇所を見せてもらってください。深夜・休日の労働には別途の割増賃金が必要です。

官公庁向けの営業は、民間向けと働き方が違いますか

自治体の会計年度に合わせて、年度末に次年度の契約の提案と会計年度任用職員の募集の周知が重なりやすい構造があります。複数年度のBPOは債務負担行為(地方自治法第214条)で組まれるので、その割合を聞けば年度末の実態が分かります。民間向けの営業は年度の周期に縛られない一方、企業の採用の時期に繁忙があります。同じ会社で官公庁向けと民間向けの両方の部門がある場合、配属によって働き方が変わるので、業務の変更の範囲(労働基準法施行規則第5条第1号の3)を労働条件通知書で確かめてください。

出典

  1. 職業安定法 第30条(有料職業紹介事業の許可)/第32条の3(手数料)|e-Gov法令検索
  2. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条(用語の意義)/第5条(労働者派遣事業の許可)|e-Gov法令検索
  3. 地方公務員法 第22条の2(会計年度任用職員の採用の方法等)/第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  4. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第214条(債務負担行為)|e-Gov法令検索
  5. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第38条の2(事業場外労働のみなし労働時間)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  6. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)|e-Gov法令検索
  7. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  8. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  9. 厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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