制度とお金 / 給与・手当
夜間勤務手当と宿日直手当
交替制の職場で夜勤の割り振りがある。庁舎の宿直や休日の日直の当番が回ってくる。どちらも「夜や休みの日に職場にいる」勤務ですが、給与明細では別の手当として載ります。夜間勤務手当と宿日直手当は、根拠になる条文も、額の決まり方も違います。
この記事では、2つの手当の根拠、国の制度での計算の仕方、時間外勤務手当との関係、民間の深夜割増や宿日直との違いを整理します。
地方公務員の夜間勤務手当と宿日直手当は、各自治体が条例と規則で定めます。この記事では特定の自治体の割合や額を示しません。自分の扱いは、所属の給与条例と規則、人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
2つの手当の根拠——地方自治法第204条と地方公務員法第25条
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当を列挙しています。その中に、時間外勤務手当や休日勤務手当と並んで、宿日直手当と夜間勤務手当が別々に挙げられています。同条第3項で、額と支給方法は条例で定めることとされています。
地方公務員法第25条第3項は、給与に関する条例に定める事項として、第4号で「時間外勤務手当、夜間勤務手当及び休日勤務手当に関する事項」を挙げています。夜間勤務手当は、条例に書くことが法律で求められている手当の1つです。
国の制度では、夜間勤務手当に当たるものを夜勤手当と呼びます。多くの自治体の条例は国の給与法を参考に作られているため、以下では国の条文を例に仕組みを見ていきます。
| 手当 | 国の条文 | 何に対して付くか |
|---|---|---|
| 夜勤手当(地方では夜間勤務手当) | 給与法第18条 | 正規の勤務時間として、午後10時から翌日午前5時までの間に勤務したこと |
| 宿日直手当 | 給与法第19条の2、人事院規則9-15 | 正規の勤務時間以外に、宿直・日直の勤務をしたこと(1回ごと) |
夜勤手当——正規の勤務時間が深夜にかかるとき
給与法第18条は、正規の勤務時間として午後10時から翌日の午前5時までの間に勤務することを命じられた職員に、その間に勤務した全時間について、勤務1時間当たりの給与額の100分の25を夜勤手当として支給するとしています。
ポイントは「正規の勤務時間として」という部分です。夜勤を含む交替制のように、もともと深夜に勤務時間が割り振られている人が対象です。勤務1時間当たりの給与額は、俸給の月額と地域手当などの月額の合計に12を掛け、1週間当たりの勤務時間に52を掛けたもので割って求めます(給与法第19条)。単価の考え方は時間外勤務手当の記事にまとめています。
では、日中の勤務の後に残業して午後10時を過ぎた場合はどうなるか。これは正規の勤務時間を超えた勤務なので、夜勤手当ではなく超過勤務手当の扱いです。給与法第16条第1項は、超過勤務が午後10時から翌日午前5時までの間である場合、超過勤務手当の割合に100分の25を加算するとしています。
| 深夜の勤務の形 | 国での扱い |
|---|---|
| 正規の勤務時間が深夜にかかる(交替制など) | 夜勤手当 100分の25(給与法第18条) |
| 残業が深夜に及ぶ | 超過勤務手当の割合に100分の25を加算(給与法第16条第1項) |
なお、国の条文では、超過勤務手当・休日給・夜勤手当(第16条から第18条まで)は管理監督職員等には適用しないとされています(給与法第19条の8第2項)。
宿日直手当——1回ごとの定額
宿直・日直は、正規の勤務時間とは別の勤務です。勤務時間法第13条第1項は、正規の勤務時間以外の時間に、設備等の保全、外部との連絡、文書の収受を目的とする勤務その他の断続的な勤務を命じることができるとしています。その中身は人事院規則15-14第13条第1項が定めていて、第1号は、本来の勤務に従事しないで行う庁舎・設備・書類等の保全、外部との連絡、文書の収受、庁内の監視を目的とする勤務です。
この勤務に付くのが宿日直手当です。給与法第19条の2第1項は、勤務1回につき、上限の範囲内で人事院規則で定める額を支給するとしています。人事院規則9-15第2条第1項は、上の第1号の勤務について、1回4,700円としています。勤務時間が5時間未満の場合はその100分の50です。また、執務時間が午前8時30分から午後零時30分までの日などに退庁時から引き続いて行う宿直は、100分の150を掛けた額とされています(同条第2項)。
宿日直手当は時間単価ではなく、1回いくらの定額です。給与法第19条の2第3項は、宿日直勤務は第16条から第18条までの勤務(超過勤務・休日勤務・夜勤)には含まれないとしています。つまり、国の制度では、宿直で夜を越しても、その時間は超過勤務手当や夜勤手当の計算には入りません。
転職するとどうなるか
1. 民間の深夜割増は「2割5分以上」
民間企業では、労働基準法第37条第4項が、午後10時から午前5時までの労働に通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を求めています。正規の勤務時間か残業かを問わず、深夜の時間帯に働いた分に付く仕組みです。地方公務員法第58条第3項が地方公務員に適用しない労働基準法の規定の中に、第37条は入っていません。
2. 管理職の深夜の扱いは規程で確かめる
労働基準法第41条は、管理監督者などについて「労働時間、休憩及び休日に関する規定」を適用しないとしています。転職先で管理職として入る場合、深夜の割増の扱いがどうなっているかは、就業規則と賃金規程で確かめておくと安心です。
3. 民間の宿日直には許可の仕組みがある
民間で宿直・日直の勤務で断続的な業務に就かせるには、所轄労働基準監督署長の許可を受ける仕組みがあります(労働基準法施行規則第23条、労働基準法第41条第3号)。宿日直の手当の額や回数は会社ごとに違うので、求人票や労働条件通知書で確かめてください。
4. 「夜勤あり」の求人は時間帯と手当を分けて読む
求人票の「夜勤あり」「シフト制」だけでは、深夜の時間帯がどこまでか、割増がどう付くかは分かりません。勤務の時間帯、深夜割増の率、仮眠時間の扱いを分けて確かめます。
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手続きと確認のしかた
確認するとよいのは次の点です。
- 夜間勤務手当の対象:国では正規の勤務時間として午後10時から午前5時までに勤務した時間(給与法第18条)。自分の勤務の割振りがこれに当たるか
- 割合:国では100分の25。所属の条例・規則での割合
- 宿日直手当の額と区分:国では一般の宿日直は1回4,700円、5時間未満は100分の50(人事院規則9-15第2条)。所属の規則で、勤務の種類ごとに額が分かれているか
- 宿日直中に通常の業務をした場合の扱い:宿日直は断続的な勤務として位置付けられている(勤務時間法第13条第1項)。宿日直中に本来の業務に当たった場合の扱いは、所属の規則と人事担当課で確かめる
退職を考えている場合は、最後の月の夜間勤務手当や宿日直手当がいつ支給されるかも確かめておきたい点です。勤務した月と支給される月がずれることもあるため、退職日と支給日の関係は所属の給与担当で確かめてください。
誤解されやすい点
「残業が午後10時を過ぎれば夜勤手当が付く」と思い込む
国の夜勤手当は、正規の勤務時間として深夜に勤務した場合の手当です(給与法第18条)。残業が深夜に及んだ場合は、超過勤務手当の割合に100分の25が加算される形になります(第16条第1項)。
「宿直の時間は超過勤務として計算される」と思い込む
国では、宿日直勤務は超過勤務・休日勤務・夜勤には含まれないとされています(給与法第19条の2第3項)。手当は1回ごとの定額です。
「宿日直手当は誰でも同じ額」と思い込む
国の規則でも、勤務の種類や時間の長さ、半日勤務日の宿直かどうかで額が分かれています(人事院規則9-15第2条)。自治体の額と区分は条例・規則によります。
「民間なら夜勤手当の率は公務員より高い」と思い込む
労働基準法の深夜割増の最低ラインは2割5分で、国の夜勤手当の100分の25と同じ水準です。上乗せがあるかは会社ごとの規程によります。
まとめ
- 夜間勤務手当と宿日直手当は、地方自治法第204条第2項にもとづき条例で支給できる手当で、別々の手当として挙げられている。夜間勤務手当は地方公務員法第25条第3項第4号で条例に定める事項とされている
- 国の夜勤手当は、正規の勤務時間として午後10時から午前5時までに勤務した時間に、勤務1時間当たりの給与額の100分の25(給与法第18条)
- 残業が深夜に及んだ場合は、夜勤手当ではなく超過勤務手当の割合に100分の25を加算(給与法第16条第1項)
- 宿日直手当は1回ごとの定額。国の一般の宿日直は1回4,700円、5時間未満は100分の50(給与法第19条の2、人事院規則9-15第2条)。宿日直は超過勤務・夜勤に含まれない
- 民間では深夜割増は2割5分以上(労働基準法第37条第4項)。宿日直には労働基準監督署長の許可の仕組みがある
よくある質問
会計年度任用職員にも夜間勤務手当や宿日直手当はありますか
会計年度任用職員の報酬や手当の扱いは、各自治体の条例と規則で定められています。夜間に勤務した場合の報酬の扱いや、宿日直を命じられるかどうかも条例・規則によるので、任用通知書と所属の人事担当で確かめてください。会計年度任用職員の制度は会計年度任用職員の記事にまとめています。
宿日直中に災害対応などで本来の業務をした場合はどうなりますか
国の規則では、宿日直は本来の勤務に従事しないで行う断続的な勤務として定められています(人事院規則15-14第13条第1項)。宿日直の途中で本来の業務に当たった場合に、その時間をどう扱うかは、所属の給与条例・勤務時間条例と規則によります。扱いが分からないときは、勤務の記録を残したうえで人事担当課に確かめてください。手当の種類の全体像は特殊勤務手当の記事にもまとめています。
夜間勤務手当も共済の掛金や税金の対象になりますか
一般的には、夜間勤務手当や宿日直手当も給与の一部として、所得税の源泉徴収や共済の掛金の計算の対象になります。夜勤や宿日直の多い月は給与の額が増えるので、源泉徴収される税額も変わるのが一般的な取扱いです。共済の掛金の算定にどの月の給与が使われるかは、所属の共済組合の案内で確かめてください。具体的な税額は扶養の状況などで変わるので、明細と税務署の案内で確認するのが確実です。