制度とお金 / 年金
退職時の年金の手続き
退職の手続きは、人事の担当課が案内してくれます。ところが、年金の手続きは、退職の後、自治体の外で発生するものがあります。共済組合、転職先、市区町村。この3か所で、誰が何をするのかを知らないまま辞めると、空白の期間の手続きを落とします。
分かれ目は1つです。転職先の入社日が、退職日の翌日かどうか。翌日なら、手続きのほとんどは共済組合と転職先が行い、本人がすることは少ない。間があけば、その期間は国民年金の第1号被保険者になり、自分で市区町村に届け出ます。
この記事では、退職時の年金の手続きを、3か所に分けて整理します。日本年金機構の案内と、国民年金法・厚生年金保険法の条文が根拠です。年金は個別性が高い分野なので、制度の骨を書きます。自分の場合は、共済組合と市区町村の窓口で確認してください。期間の扱いは共済期間は転職後どうなるかに書いています。
分かれ目——入社日が退職日の翌日か
| 場合 | 年金の種別の動き | 本人の手続き |
|---|---|---|
| 入社日が退職日の翌日 | 第3号厚生年金被保険者(共済)→ 第1号厚生年金被保険者(民間)に、空白なく移る | 転職先に基礎年金番号を伝える。市区町村での手続きは不要 |
| 入社まで間があく | 共済 → 国民年金の第1号被保険者 → 民間の厚生年金 | 退職日の翌日から14日以内に市区町村で国民年金の届出。入社時に転職先に基礎年金番号を伝える |
| 転職先が決まっていない | 共済 → 国民年金の第1号被保険者 | 同上。保険料を自分で納める |
日本年金機構の案内では、月末までに就職しない場合は国民年金第1号の手続きが必要で、月の途中で入社すればその時点で第2号被保険者になる、と説明されています。入社日が月をまたぐかどうかで、国民年金の保険料が発生する月が変わります。
場所1:共済組合——本人がすることは少ない
退職すると、共済組合員の資格を喪失します。この手続きは、自治体の共済の担当と共済組合の間で行われ、本人が届け出るものではありません。ただし、退職の際に確かめておくことが3つあります。
- 組合員の番号と、共済組合から交付される書類を保管する。将来、退職等年金給付を請求するときに使います
- 退職等年金給付の給付算定基礎額(付与額の累計)を、制度の照会として聞いておく。1年以上の組合員期間があれば、65歳で退職年金を受け取れます(地方公務員等共済組合法第88条)
- 平成27年9月以前から公務員だった方は、その期間の記録が共済組合にあることを確かめる
健康保険(短期給付)の任意継続の申出も共済組合への手続きですが、これは年金とは別で、期限があります。資金の面は退職手当をあてにした資金計画の考え方に書いています。
場所2:転職先——事業主が届け出る
厚生年金保険法第27条は、適用事業所の事業主が、被保険者の資格の取得と喪失などを届け出なければならないと定めています。転職先の厚生年金の資格取得の届出は、転職先が行います。本人がすることは、基礎年金番号を伝えることです。入社の書類で求められます。
基礎年金番号を伝えれば、公務員の期間と民間の期間は同じ番号でつながります。転職先が届け出た日から、第1号厚生年金被保険者になります。
場所3:市区町村——空白があれば自分で届け出る
国民年金法第12条第1項は、被保険者が資格の取得・喪失・種別の変更に関する事項を市町村長に届け出なければならないと定めています。退職から入社まで間があく場合、その期間は国民年金の第1号被保険者になり、この届出が要ります。
日本年金機構の案内では、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 退職日の翌日から14日以内 |
| 届出先 | 住所地の市区役所または町村役場 |
| 届書 | 国民年金被保険者関係届書(申出書) |
| 持ち物 | 基礎年金番号を明らかにできる書類(基礎年金番号通知書など)、またはマイナンバーカード(もしくはマイナンバー確認書類と身元確認書類) |
| 届出人 | 本人または世帯主 |
退職の翌日から14日以内です。退職手当の支給日や転職先の入社日とは関係なく、退職日で期限が決まります。マイナポータルからの電子申請もできると案内されています。
入社後は、転職先の届出で第1号厚生年金被保険者になるので、国民年金の第1号被保険者は自動的に終わります。入社時に改めて市区町村で手続きをする必要は、原則としてありません。
見落としやすい点——配偶者の第3号被保険者
日本年金機構の案内には、退職者の配偶者が第3号被保険者だった場合、配偶者もその資格を喪失するため、国民年金第1号被保険者への切替えの手続きが必要と書かれています。
自分の手続きだけでなく、扶養している配偶者の手続きも同時に発生します。入社日が退職日の翌日なら、転職先の届出で配偶者も再び第3号被保険者になりますが、空白があれば、その期間は配偶者も第1号被保険者として保険料を納める形になります。配偶者の分も、市区町村への届出が要ります。
転職するとどうなるか
退職時の年金の手続きで、効いてくる点は3つです。
1. 入社日が退職日の翌日なら、本人の手続きは基礎年金番号を伝えるだけ
共済組合の資格の喪失と転職先の資格の取得は、それぞれの側が届け出ます。
2. 空白があれば、退職日の翌日から14日以内に市区町村で国民年金の届出
期限は退職日で決まります。配偶者が第3号被保険者なら、その分も。
3. 退職時に、共済組合の書類と組合員の番号を保管する
65歳で退職等年金給付を請求するときに使います。転職先とは無関係の、共済組合への請求です。
手続きと期限
時系列にまとめます。
| 時期 | 場所 | すること |
|---|---|---|
| 退職の前 | 共済組合 | 組合員の番号と書類の確認。退職等年金給付の給付算定基礎額の照会(任意)。健康保険の任意継続の期限の確認 |
| 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村 | 空白があれば国民年金第1号の届出。配偶者が第3号被保険者ならその分も |
| 入社日 | 転職先 | 基礎年金番号を伝える。転職先が厚生年金の資格取得を届け出る |
| 入社後 | — | ねんきん定期便で、公務員の期間と民間の期間がつながっているかを確かめる |
| 65歳 | 共済組合・日本年金機構 | 老齢厚生年金と退職等年金給付の請求。窓口はどちらでも受け付けられる |
期限があるのは、市区町村への届出(14日以内)と、健康保険の任意継続の申出です。この2つだけは、退職の前に日付を確かめておいてください。
誤解されやすい点
「退職の手続きは全部、人事の担当課がやってくれる」と思い込む
国民年金への切替えは、自治体の外で本人が行う手続きです。
「転職先が決まっているから、市区町村の手続きは要らない」と思い込む
入社日が退職日の翌日でなければ、空白の期間の届出が要ります。
「配偶者の年金は自分と関係ない」と思い込む
第3号被保険者だった配偶者は、同時に資格を失います。切替えの手続きが要ります。
「共済組合の書類は退職したら要らない」と思い込む
65歳で退職等年金給付を請求するときに使います。保管してください。
まとめ
- 分かれ目は「入社日が退職日の翌日かどうか」です。翌日なら市区町村の手続きは不要、間があけば退職日の翌日から14日以内に市区町村で国民年金第1号の届出が要ります(国民年金法第12条、日本年金機構の案内)
- 共済組合員の資格の喪失は自治体と共済組合の間で処理され、本人が届け出るものではありません。組合員の番号と書類は保管してください
- 転職先の厚生年金の資格取得は事業主が届け出ます(厚生年金保険法第27条)。本人は基礎年金番号を伝えるだけです
- 配偶者が第3号被保険者だった場合、同時に資格を失うので、切替えの手続きが要ります
- 1年以上の組合員期間があれば、65歳で共済組合に退職等年金給付を請求します(地方公務員等共済組合法第88条)
- 期限があるのは、市区町村への届出(14日以内)と健康保険の任意継続の2つです
よくある質問
3月31日に退職して、4月1日に入社します。市区町村での手続きは要りますか
原則として要りません。入社日が退職日の翌日なので、第3号厚生年金被保険者(共済)から第1号厚生年金被保険者(民間)に空白なく移ります。共済組合員の資格の喪失は自治体と共済組合の間で、転職先の資格の取得は転職先が届け出ます(厚生年金保険法第27条)。本人がすることは、転職先に基礎年金番号を伝えることです。配偶者が第3号被保険者なら、転職先の届出で引き続き第3号被保険者になります。ただし、入社日が4月2日以降にずれた場合は、その空白の期間について市区町村への届出が要るので、入社日が確定してから判断してください。
退職から入社まで2か月あきます。保険料はどうなりますか
その2か月は国民年金の第1号被保険者になり、保険料を自分で納めます。退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村で国民年金被保険者関係届書を出してください(日本年金機構の案内)。日本年金機構の説明では、月末までに就職しない月は国民年金第1号の期間になり、月の途中で入社すればその時点で第2号被保険者になる、とされています。配偶者が第3号被保険者だった場合は、配偶者もこの2か月は第1号被保険者になり、保険料が発生します。納めた期間は、受給資格の期間と老齢基礎年金の額に数えられます。保険料の額と納付の方法は、市区町村の窓口で確認してください。
退職等年金給付の請求は、転職先を通じてできますか
できません。共済組合への請求です。退職等年金給付は、在職していた共済組合の制度で、転職先の年金とは無関係です。地方公務員等共済組合法第88条は、1年以上の引き続く組合員期間を有する者が退職した後に65歳に達したときに退職年金を支給すると定めています。65歳の時点で、共済組合に請求します。そのために、退職時に交付される書類と組合員の番号を保管しておいてください。老齢厚生年金の請求は日本年金機構と共済組合のどちらの窓口でも受け付けられますが、退職等年金給付は共済組合にしかない制度なので、忘れずに請求してください。仕組みは職域加算と年金払い退職給付に書いています。