制度とお金 / 退職手当
国家公務員と地方公務員の違い
退職手当を調べていると、「国家公務員退職手当法によれば」という説明と、「自治体の条例によれば」という説明が混ざって出てきます。自分にどちらが当てはまるのかが分からないまま読んでいる方が多くいます。
答えは単純で、国家公務員なら法律、地方公務員なら条例です。ただし、地方公務員の条例は国の法律に沿って作られているのが一般的なので、国の法律を知ることが無意味なわけではありません。どこが同じで、どこが違うのかを知っておくと、自分の条例を読む速度が上がります。
この記事では、国と地方の退職手当の違いを、根拠、支給率、事務の主体、調整額、早期退職の募集、通算の6点で整理します。仕組みの全体は退職手当の仕組み|何で金額が決まるのか、条例の読み方は退職手当条例の読み方で扱っています。
違い1:根拠——法律か、条例か
国家公務員の退職手当は、国家公務員退職手当法で決まります。第2条第1項は、この法律の退職手当を「常時勤務に服することを要する国家公務員」が退職した場合に支給すると定めています。法律に支給率の表まで書かれているので、国家公務員なら、法律を読めば自分の式が分かります。
地方公務員の退職手当は、所属自治体の条例で決まります。地方自治法第204条第2項は、普通地方公共団体が条例で退職手当を支給することができると定め、第3項で額と支給方法は条例で定めなければならないとしています。そして第204条の2が、法律または条例に基づかない給付を禁じています。
さらに、地方公務員法第24条第5項は、「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」と定めています。地方公務員の退職手当は、法律ではなく、自治体ごとの条例が根拠です。
違い2:支給率——国の表に「準じる」が、同じとは限らない
国の支給率は、第3条から第5条に表として書かれています(自己都合等は1〜10年100分の100、11〜15年110、16〜20年160、21〜25年200、26〜30年160、31年以上120など)。
地方公務員の支給率は、条例の別表にあります。ここで効いてくるのが、地方公務員法第24条第2項です。
> 職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない。
国の職員の給与を「考慮して」定める——この定めがあるため、多くの自治体は国の退職手当法に準じた支給率を条例で採っています。ただし、「準じる」であって「同じ」ではありません。国と同じ数字を採っている自治体もあれば、区分の境目や数字が違う自治体もあります。自分の条例の別表を、国の表と並べて確かめてください。
違い3:事務の主体——各省庁か、自治体か、一部事務組合か
国家公務員の退職手当は、各省庁が退職手当管理機関として事務を行います。
地方公務員は、自治体自身が事務を行う場合と、一部事務組合に事務を委ねている場合があります。地方自治法第284条は、普通地方公共団体が事務の一部を共同処理するために一部事務組合を設けることができると定めています。町村を中心に、退職手当の事務を都道府県ごとの総合事務組合で処理している例が多く、その場合は組合の条例が根拠で、支給の時期も組合の周期になります。
この違いは、支給の時期に直接効きます。国は「退職の日から1か月以内」(第2条の3第2項)が定めですが、自治体の実務は翌月から数か月後まで幅があります。詳しくは支給日と受け取り方に書いています。
違い4:調整額——国にはあり、自治体はあるとは限らない
国の退職手当は、基本額と調整額の2階建てです(第6条の4)。調整額は、在職中の職員の区分を月ごとに積み上げる仕組みで、自己都合等退職者は勤続9年以下でゼロ、10〜24年で2分の1になります。
自治体の条例は、調整額の仕組みを採っているところと、採っていないところがあります。採っている場合も、区分と額が国と同じとは限りません。「調整額」という言葉が条例にあるかどうかから確かめてください。詳しくは調整額とは何かに書いています。
違い5:早期退職の募集——国は法律、自治体は条例ごと
国の第8条の2は、各省各庁の長等が定年前に退職する意思を有する職員の募集を行うことができると定め、これに応じて認定を受けて退職すると、自己都合ではなく定年等の表が適用されます。
自治体にも、早期退職の募集や勧奨退職の仕組みを条例で置いているところがありますが、対象の年齢、募集の時期、認定の要件は自治体ごとに違い、置いていない自治体もあります。該当する年齢に近い方は、自分の自治体にこの制度があるかを条例で確かめてください。違いの中身は自己都合退職と定年退職で何が変わるかに書いています。
違い6:通算——国と地方の間で、条件つきで引き継がれる
国の第7条第5項は、地方公務員が機構の改廃、施設の移譲その他の事由によって引き続いて国の職員となった場合、地方公務員としての在職期間を含めると定めています。逆方向——国から地方——や、自治体どうしの通算は、自治体の条例の定めによります。多くの条例が通算の定めを置いていますが、「引き続き」の要件と相手先は条例ごとに違います。詳しくは再任用・再就職と退職手当に書いています。
転職するとどうなるか
転職を考えている地方公務員の方にとって、この記事で効いてくる点は3つです。
1. 自分の根拠は条例。国の法律は物差し
見込みを立てるときは、条例の別表の数字を使ってください。国の数字は、条例を読むときの参照用です。
2. 事務の主体で、支給の時期が変わる
自治体自身か、一部事務組合か。支給日の見込みは、どちらかで大きく変わります。人事の担当課に確認してください。
3. 調整額と早期退職の募集は、あるかないかから確かめる
国にはある仕組みが、自分の自治体にはないことがあります。条例の目次で確かめてください。
手続きと期限
国家公務員と地方公務員で、退職手当の請求の手続きの骨は同じです。退職の辞令、請求の書類、「退職所得の受給に関する申告書」の提出。違うのは、手続きの相手——各省庁か、自治体の人事の担当課か、一部事務組合か——と、支給の周期です。
国から地方、地方から国へ移る方は、通算の要件を、移る前に両方の側で確認してください。「引き続き」の要件を満たさないと、通算されません。
誤解されやすい点
「国家公務員退職手当法が地方公務員にも適用される」と思い込む
地方公務員の根拠は条例です(地方自治法第204条、地方公務員法第24条第5項)。国の法律は直接には適用されません。
「条例は国の法律と同じ」と思い込む
「準じる」であって「同じ」ではありません。区分、数字、調整額の有無が違う自治体があります。
「自治体なら、退職手当は自治体が払う」と思い込む
一部事務組合に事務を委ねている自治体では、組合が支給します。時期も組合の周期です。
「国にある仕組みは、自治体にもある」と思い込む
調整額と早期退職の募集は、自治体によってはありません。
まとめ
- 国家公務員は国家公務員退職手当法、地方公務員は所属自治体の条例が根拠です(地方自治法第204条・第204条の2、地方公務員法第24条第5項)
- 地方公務員の給与は国の職員の給与を考慮して定めるとされ(地方公務員法第24条第2項)、多くの条例は国の支給率に準じますが、同じとは限りません
- 事務の主体は、国は各省庁、地方は自治体自身か一部事務組合です(地方自治法第284条)。支給の時期に直接効きます
- 調整額と早期退職の募集は、国にはありますが、自治体によってはありません
- 国と地方の間の通算は、国の第7条第5項と自治体の条例で、条件つきで引き継がれます
- 国の法律は物差し、条例が根拠。自分の条例の別表を国の表と並べて確かめてください
よくある質問
国家公務員退職手当法の支給率で、自分の退職手当を概算してよいですか
比較の物差しとしては構いませんが、自分の額の根拠にはなりません。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条第2項・第3項)。多くの条例は国の支給率に準じていますが、区分の境目や数字、調整額の有無、自己都合の乗率が違う自治体があります。国の表と自分の条例の別表を同じ紙に並べて、同じか違うかを確かめてから概算してください。同じなら国の解説がそのまま使えますし、違うなら違う部分だけ読み替えれば済みます。
町役場ですが、退職手当の条例が例規集にありません。どうなっていますか
一部事務組合に加入している可能性が高いです。地方自治法第284条は、普通地方公共団体が事務の一部を共同処理するために一部事務組合を設けることができると定めています。町村を中心に、退職手当の事務を都道府県ごとの総合事務組合で処理している例が多く、その場合は組合の退職手当条例が根拠で、自治体の例規集には加入の規約しか載っていないことがあります。「◯◯県 市町村総合事務組合 退職手当条例」で検索するか、人事の担当課に「退職手当の条例はどこで読めますか」と聞いてください。支給の時期も組合の周期になるので、併せて確認してください。
国家公務員から地方公務員に移りました。国の勤続は通算されますか
自治体の条例の定めによります。国の第7条第5項は地方公務員から国への引き続きを定めていますが、逆方向——国から地方——の通算は、移った先の自治体の条例の通算の定めが根拠です。多くの条例が、国や他の自治体から引き続いて職員となった場合の通算の定めを置いていますが、「引き続き」の要件と、任命権者の要請による異動に限るかどうかは条例ごとに違います。すでに移っている方は、今の自治体の人事の担当課に「国の在職期間が通算されているか」を制度の照会として確認してください。通算の扱いは再任用・再就職と退職手当に整理しています。