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制度とお金 / 退職手当

再任用・再就職と退職手当

「退職した後、また働く」には、いくつもの形があります。60歳で退職して短時間勤務で再任用される。他の自治体や国に移る。民間に転職する。この3つは、日常の言葉では全部「再就職」ですが、退職手当の扱いはそれぞれ違います。

違いの中心は、「退職手当の勤続が続くのか、いったん切れて支給されるのか」です。ここを取り違えると、支給の時期の見込みも、額の見込みも外れます。

この記事では、3つの形それぞれで退職手当の勤続がどう扱われるかを、国家公務員退職手当法と国家公務員法の条文で整理します。地方公務員の退職手当は所属自治体の条例で決まります(地方自治法第204条)が、引き続きの扱いも国の法律に沿った定めを置くのが一般的です。自分の場合は、条例と人事の担当課で必ず確認してください。仕組みの全体は退職手当の仕組み|何で金額が決まるのかで扱っています。

出発点——退職手当は「常時勤務を要する職員」が対象

国家公務員退職手当法第2条第1項は、この法律による退職手当を「常時勤務に服することを要する国家公務員(中略)が退職した場合に」支給すると定めています。対象は、常時勤務を要する職員です。第2項で、勤務の形態が職員に準ずる者を政令で職員とみなす仕組みがありますが、原則は常勤です。

そして、第7条第3項が、「引き続き」の扱いを定めています。

> 職員が退職した場合(中略)において、その者が退職の日又はその翌日に再び職員となつたときは、前二項の規定による在職期間の計算については、引き続いて在職したものとみなす。

退職の日か翌日に「再び職員」になれば、勤続は切れません。ここで言う「職員」は、第2条の常時勤務を要する職員です。この2つの条を組み合わせると、3つの形の違いが見えてきます。

形1:定年前再任用短時間勤務——勤続は続かず、退職手当は退職時に支給

国家公務員法第60条の2は、年齢60年に達した日以後に退職した者を、短時間勤務の官職に採用する仕組みを定めています。これが定年前再任用短時間勤務職員です。任期は、採用の日から定年退職日相当日までです。

ここで効いてくるのが、「短時間勤務」という点です。退職手当法の対象は常時勤務を要する職員なので、短時間勤務の官職を占める定年前再任用短時間勤務職員は、退職手当法の「職員」に当たりません。したがって、

という形になります。再任用の期間分が後で上乗せされることはなく、再任用の終了時に改めて退職手当が出ることもありません。自治体の条例にも、定年前再任用短時間勤務職員に相当する仕組みと、退職手当の適用除外の定めが置かれているのが一般的です。自分の自治体の条例で、適用範囲の条を確認してください。

形2:他の自治体や国に移る——「引き続き」なら勤続は続く

退職の日か翌日に、他の自治体や国の常時勤務の職員になる場合は、第7条第3項の「再び職員となつたとき」に当たり得ます。国の法律では、第7条第5項が、地方公務員が機構の改廃、施設の移譲その他の事由によって引き続いて国の職員となった場合に、地方公務員としての在職期間を含めると定めています。

自治体の条例にも、国や他の自治体から引き続いて職員となった場合の通算の定めを置いているのが一般的です。この場合、

という形になります。ただし、「引き続き」の要件と、通算の対象になる相手先は、条例ごとに違います。任命権者の要請による異動なのか、自分で採用試験を受けて移るのか、間が空くのかで扱いが変わります。転籍を考えている方は、移る前に、両方の自治体の条例と人事の担当課で確認してください。移った後に「通算されなかった」と分かっても、戻せません。

形3:民間に転職する——勤続は切れ、退職手当は支給される

民間の会社に転職する場合、「再び職員となる」には当たりません。退職の時点で勤続は終わり、退職手当は自己都合等の退職として計算され、支給されます。自己都合の扱いは自己都合退職と定年退職で何が変わるかに整理しています。

ここで1つ、税の側の定めがあります。所得税法第30条第6項第1号は、「その年の前年以前に他の退職手当等の支払を受けている場合で政令で定める場合」に、退職所得控除額を調整すると定めています。つまり、自治体の退職手当を受けた後、転職先を退職して再び退職手当を受けるとき、前の退職手当との重複する期間について控除額が調整されることがあるという形です。転職先で長く勤めれば、実務上の影響は限られますが、制度として存在することは知っておいてください。詳しくは税務署か税理士に確認する事項です。退職所得の控除そのものは退職所得控除と税金に書いています。

転職するとどうなるか

転職を考えている方にとって、この記事で効いてくる点は3つです。

1. 民間への転職なら、退職の時点で退職手当は確定して支給される

その後の民間での勤続は、自治体の退職手当に影響しません。支給の時期は支給日と受け取り方に書いています。

2. 他の自治体や国への転籍なら、通算の要件を先に確かめる

「引き続き」の要件を満たせば通算され、前の自治体では支給されません。満たさなければ、前の自治体で自己都合の退職手当が支給され、勤続は新しく始まります。どちらになるかで、額も時期もまるで違います。

3. 定年前再任用を選ぶなら、退職手当はその時点で確定する

再任用の期間は勤続に入りません。再任用と民間を比べるとき、退職手当は比較の項目に入りません。

手続きと期限

他の自治体や国への転籍で通算を受けるには、「退職の日か翌日に」職員となる必要があります。間が1日でも空けば、引き続きにならない可能性があります。任命権者の要請による異動と、自分で試験を受けて移る場合とで、扱いが違う条例もあります。採用の内定が出た段階で、両方の人事の担当課に「退職手当の通算の扱い」を確認してください。

定年前再任用の申出は、定年退職日の前に、任命権者の定める期限までに行います。時期と手続きは自治体ごとに違います。

民間への転職では、退職手当の請求の手続きは通常の退職と同じです。「退職所得の受給に関する申告書」を支払いの前に出してください。

誤解されやすい点

「再任用の期間も退職手当の勤続に入る」と思い込む

国の形では、短時間勤務の再任用は退職手当法の職員に当たらず、勤続に入りません。

「他の自治体に移れば自動的に通算される」と思い込む

「引き続き」の要件と通算の相手先は条例ごとに違います。確認せずに移ると、通算されないことがあります。

「民間に転職しても、自治体の退職手当は後でもらえる」と思い込む

退職の時点で計算され、支給されます。後にはなりません。

「2回目の退職手当の税は、1回目と同じ計算」と思い込む

前年以前に他の退職手当を受けている場合、控除額が調整される定めがあります(所得税法第30条第6項)。

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まとめ

よくある質問

60歳で定年前再任用になった後、65歳で辞めるときに退職手当は出ますか

国の形では、出ません。定年前再任用短時間勤務職員は短時間勤務の官職を占めるため、退職手当法の「常時勤務を要する職員」に当たりません。退職手当は、60歳以後に退職した時点で計算され、支給されます。再任用の期間は勤続に入らず、再任用の終了時に改めて退職手当が出ることもありません。自治体の条例にも同様の適用除外の定めがあるのが一般的ですが、自分の自治体の条例の適用範囲の条で確認してください。なお、再任用の期間の給与や期末手当は、退職手当とは別に条例で定められています。

隣の市に採用試験を受けて移ります。退職手当は通算されますか

条例によります。自治体の条例には、国や他の自治体から引き続いて職員となった場合の通算の定めが置かれているのが一般的ですが、「引き続き」の要件と、通算の相手先、任命権者の要請による異動に限るかどうかは条例ごとに違います。自分で採用試験を受けて移る場合は、通算の対象にならない条例もあります。通算されなければ、今の市で自己都合等の退職手当が支給され、隣の市で勤続が新しく始まります。どちらになるかで、額も時期もまるで違うので、内定の段階で、両方の市の人事の担当課に「退職手当の通算の扱い」を確認してください。移った後には戻せません。

民間に転職して、数年後にまた辞めたら、税はどうなりますか

転職先の退職手当を受けるときに、前に自治体から受けた退職手当との関係で、退職所得控除額が調整されることがあります。所得税法第30条第6項第1号は、その年の前年以前に他の退職手当等を受けている場合で政令で定める場合に、控除額を調整すると定めています。重複する勤続の期間について、控除を二重に受けない形にする仕組みです。転職先で長く勤めれば実務上の影響は限られますが、短い期間で再び退職手当を受ける場合は関わります。個別の計算は、税務署か税理士に確認してください。退職所得の控除そのものは退職所得控除と税金に整理しています。

出典

  1. 国家公務員退職手当法 第2条(適用範囲)/第7条(勤続期間の計算)|e-Gov法令検索
  2. 国家公務員法 第60条の2(定年前再任用短時間勤務職員の任用)|e-Gov法令検索
  3. 所得税法 第30条(退職所得)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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