制度とお金 / 失業給付と税金
年末調整は誰がやるか
転職した年の秋、転職先の担当部門から「年末調整の書類を出してください。前の職場の源泉徴収票も」と言われて、初めて気づく方がいます。年末調整は、誰がやるのか。前の職場か、転職先か、それとも誰もやらないのか。
答えは、「その年最後に給与を払う支払者」です。年内に転職先に入社すれば転職先、入社が翌年なら誰も行わず、確定申告で精算します。転職先が年末調整をするには、前職の源泉徴収票が要ります。
この記事では、転職した年の年末調整を誰がどう行うかを、所得税法の条文と国税庁の案内で整理します。税は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の扱いは、転職先の担当部門と税務署で確認してください。確定申告の側は退職した年の確定申告に書いています。
根拠——「その年最後に給与等の支払をする」支払者
所得税法第190条は、年末調整をこう定めています。
> 給与所得者の扶養控除等申告書を提出した居住者で、(中略)その年中に支払うべきことが確定した給与等の金額が二千万円以下であるものに対し、その提出の際に経由した給与等の支払者がその年最後に給与等の支払をする場合(中略)
3つの条件が読み取れます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 扶養控除等申告書を提出している | 転職先に「給与所得者の扶養控除等申告書」を出していること(第194条) |
| 給与が2,000万円以下 | 年間の給与の合計 |
| その年最後に給与を払う支払者 | 年内に入社した転職先がこれに当たる |
そして、第190条第1号は、その年に他の支払者を経由して扶養控除等申告書を提出したことがある場合、その他の支払者が支払った給与も含めると定めています。転職先は、前職(自治体)の給与を含めて年末調整をするという形です。
3つの場面で、誰がやるか
| 場面 | 年末調整をするのは | 本人がすること |
|---|---|---|
| A. 年内に転職先に入社した | 転職先(前職の給与を含めて) | 転職先に扶養控除等申告書と前職の源泉徴収票を出す |
| B. 入社が翌年 | 誰も行わない | 翌年に確定申告で精算 |
| C. 年内に入社したが、前職の源泉徴収票を出せなかった | 転職先はできない | 確定申告で精算 |
国税庁のNo.2674は、年の途中で入社した人も年末まで勤務していれば年末調整の対象になり、入社前に他から給与を受けていた場合はその給与を含めて年末調整をすると説明しています。そのために前職の「給与所得の源泉徴収票」で給与の額と徴収された税額を確認する必要があり、源泉徴収票の提出がなければ年末調整はできず、確定申告で精算するとされています。
転職先に出す書類
Aの場面で、転職先に出すものは3つです。
| 書類 | 何のためか |
|---|---|
| 給与所得者の扶養控除等申告書 | 年末調整の対象になるための前提(第194条・第190条)。入社時に出す |
| 前職(自治体)の給与所得の源泉徴収票 | 前職の給与と源泉徴収税額を含めて計算するため。退職後に自治体から交付される |
| 保険料控除申告書と控除証明書 | 生命保険料控除、地震保険料控除、退職後に自分で納めた国民年金・健康保険の保険料(社会保険料控除) |
前職の源泉徴収票は、退職の後に自治体から届きます。届いたら、転職先に出すまで保管してください。退職手当の源泉徴収票は別の書類で、年末調整には使いません。退職手当の税は、申告書を出していれば支払い時に完結しています(退職所得の受給に関する申告書)。
控除は「按分」されない
No.2674は、扶養控除などの所得控除は、勤務月数に応じた按分ではなく、全額が認められると説明しています。年の途中で入社しても、その年の控除は丸ごと転職先の年末調整で反映されます。
退職から入社まで空白があった方は、その間に自分で納めた国民年金と健康保険(任意継続または国民健康保険)の保険料を、社会保険料控除として転職先に申告できます。控除証明書や領収書を、保険料控除申告書に添えて出してください。空白の期間の保険料は、転職先の年末調整で控除されるので、確定申告をせずに済む形になります。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、年末調整で効いてくる点は3つです。
1. 年内に入社すれば、転職先が前職の分も含めて年末調整をする
前職の給与所得の源泉徴収票を転職先に出すことが条件です。
2. 入社が翌年なら、誰も年末調整をしない
翌年に確定申告で精算します。納め過ぎが戻ることが多いです(No.1910)。
3. 空白の期間の保険料は、転職先の年末調整で控除できる
控除証明書を転職先に出してください。按分されず、全額が対象です。
手続きと期限
| 時期 | すること | どこで |
|---|---|---|
| 退職後 | 自治体から給与所得の源泉徴収票を受け取り、保管 | 自治体から交付 |
| 入社時 | 給与所得者の扶養控除等申告書を提出 | 転職先 |
| 入社後〜秋 | 前職の源泉徴収票を提出(転職先の案内に従う) | 転職先 |
| 10月〜11月頃 | 保険料控除申告書と控除証明書(生命保険、地震保険、空白の期間の国民年金・健康保険)を提出 | 転職先 |
| 12月 | 転職先が年末調整を行い、12月の給与で精算 | ── |
転職先の年末調整の書類の締切は、11月頃が多いです。前職の源泉徴収票が手元にないと年末調整ができないので、退職後に届いた源泉徴収票を紛失しないでください。紛失した場合は、自治体の人事の担当課に再交付を依頼します。
誤解されやすい点
「前の職場が年末調整をしてくれる」と思い込む
年末調整は「その年最後に給与を払う支払者」が行います(第190条)。年内に転職先に入社すれば、転職先です。
「転職先は転職後の給与だけで年末調整する」と思い込む
前職の給与を含めて行います(第190条第1号、No.2674)。だから前職の源泉徴収票が要ります。
「退職手当の源泉徴収票を転職先に出す」と思い込む
年末調整に使うのは給与所得の源泉徴収票です。退職所得の源泉徴収票は別の書類です。
「年の途中の入社だと、控除は月割になる」と思い込む
控除は按分されず、全額が認められます(No.2674)。
まとめ
- 年末調整は「その年最後に給与を払う支払者」が、扶養控除等申告書を提出した給与2,000万円以下の者に対して行います(所得税法第190条・第194条)。年内に転職先に入社すれば、転職先が前職の給与を含めて行います(第190条第1号、No.2674)
- そのために前職の給与所得の源泉徴収票を転職先に出す必要があります。出せなければ年末調整はできず、確定申告で精算します(No.2674)
- 入社が翌年なら、誰も年末調整をせず、翌年に確定申告で精算します(No.1910)
- 控除は按分されず全額が認められ、空白の期間に自分で納めた国民年金・健康保険の保険料も社会保険料控除として転職先に申告できます
- 退職手当の源泉徴収票は年末調整には使いません。給与の分と退職手当の分を分けて保管してください
- 自分の扱いは、転職先の担当部門と税務署で確認してください
よくある質問
前の職場の源泉徴収票が、転職先の年末調整の締切までに届きません
転職先の担当部門に事情を伝え、締切の延長か、確定申告での精算かを相談してください。国税庁のNo.2674は、前職の源泉徴収票の提出がなければ年末調整はできず、確定申告で精算するとしています。給与所得の源泉徴収票は、退職後に自治体から交付されるものなので、届いていなければ自治体の人事の担当課に交付の時期を確認してください。転職先の年末調整に間に合わなくても、翌年に確定申告をすれば同じ精算ができます(No.1910)。年末調整に間に合わないことで税が増えるわけではなく、精算の場所が変わるだけです。
退職後に自分で納めた国民年金と健康保険の保険料は、どこで控除しますか
年内に転職先に入社したなら、転職先の年末調整で社会保険料控除として申告できます。保険料控除申告書に、国民年金の控除証明書と、国民健康保険または任意継続の保険料の領収書や証明書を添えて出してください。No.2674の説明のとおり、控除は勤務月数で按分されず、全額が対象です。入社が翌年なら、退職の年の分は確定申告で控除します。証明書は、日本年金機構や市区町村、共済組合から届くか、請求すれば交付されるので、保管しておいてください。控除の適用の詳細は、転職先の担当部門と税務署で確認を。
年末調整のあとに、退職手当の分は何かする必要がありますか
「退職所得の受給に関する申告書」を支払者に出していれば、原則として何も要りません。退職手当の税は支払い時に源泉徴収で完結し、年末調整の対象ではなく、確定申告も原則として要りません(所得税法第121条第2項、No.2732)。転職先の年末調整に退職手当を含める必要もありません。申告書を出し忘れて20.42パーセントが引かれている場合だけ、翌年に確定申告で精算します。退職所得の源泉徴収票は、その場合に使うので保管してください。仕組みは退職所得の受給に関する申告書と退職した年の確定申告に書いています。