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医療費控除・生命保険料控除の扱い
公務員でいる間、生命保険料控除は年末調整の書類に証明書を貼れば済み、医療費控除は使ったことがない方がほとんどです。退職の年は、この2つの扱いが変わります。
変わり方は、「年末調整で受けられる控除」と「確定申告でしか受けられない控除」の線で決まります。生命保険料控除は前者、医療費控除は後者。退職の年に誰が年末調整をするか、確定申告をするかで、出す先が変わります。
この記事では、退職の年の医療費控除と生命保険料控除の扱いを、国税庁の案内で整理します。税は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の控除は、転職先の担当部門と税務署で確認してください。年末調整の側は年末調整は誰がやるか、確定申告の側は退職した年の確定申告に書いています。
出発点——2種類の控除
| 控除 | 受けられる場所 | 根拠 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 年末調整でも確定申告でも | No.1140(年末調整で受けられる) |
| 医療費控除 | 確定申告のみ | No.1120(年末調整では受けられない) |
生命保険料控除は、年内に転職先に入社して年末調整を受けるなら、転職先の年末調整で受けられます。在職中と同じ形です。医療費控除は、在職中でも確定申告が要る控除で、退職の年も同じです。
生命保険料控除——転職先の年末調整に出す
国税庁のNo.1140によれば、生命保険料控除は一般の生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの区分で構成されます。
| 契約の時期 | 各区分の上限 | 合計の上限 |
|---|---|---|
| 新制度(平成24年1月1日以後の契約) | 各4万円 | 12万円 |
| 旧制度(平成23年12月31日以前の契約) | 各5万円 | 10万円 |
新旧の両方に加入している場合は、旧制度の支払保険料が6万円を超えると旧制度のみ、6万円以下なら両者を合計(最高4万円または6万円)とされています。計算は、控除証明書の額を年末調整の書類に書けば、転職先が行います。
退職の年の扱いは、年末調整を誰がするかで決まります。
| 状況 | 生命保険料控除の受け方 |
|---|---|
| 年内に転職先に入社し、年末調整を受ける | 転職先の保険料控除申告書に控除証明書を添えて出す。前職の給与も含めて年末調整されるので、その年の控除は丸ごと反映される(No.2674、按分なし) |
| 年をまたいで再就職、または年末調整を受けない | 確定申告で控除証明書を添付して受ける |
在職中に共済組合や職場の団体で入っていた保険があれば、退職で契約がどうなったかを確かめてください。退職で契約が終わったものは、その年に払った分だけが対象です。控除証明書は保険会社から10月頃に届くので、転職先の年末調整の締切までに揃えてください。
医療費控除——確定申告でしか受けられない
国税庁のNo.1120によれば、医療費控除は、自分または生計を一にする配偶者・親族のために、その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費について、次の額を所得から控除するものです。
(支払った医療費の合計 − 保険金などで補てんされた額 − 10万円)※総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円の代わりに総所得金額等の5パーセント。控除額の上限は200万円。
手続きは確定申告です。No.1120は、年末調整では受けられないと明記しています。「医療費控除の明細書」を領収書から作成し、確定申告書に添付します。
退職の年に効いてくる点が1つあります。「10万円の代わりに総所得金額等の5パーセント」の部分です。年の途中で退職して、その年の総所得金額等が200万円未満になった場合、差し引く額が10万円から「総所得金額等の5パーセント」に下がります。たとえば総所得金額等が120万円なら、差し引くのは6万円です。在職中は10万円を超えなければ控除にならなかった医療費が、退職の年は控除の対象になることがあります。
| 総所得金額等 | 差し引く額 | 例:医療費が9万円の場合 |
|---|---|---|
| 200万円以上 | 10万円 | 控除なし |
| 120万円 | 6万円(5パーセント) | 3万円が控除の対象 |
退職の年に医療費がかさんだ方は、確定申告で医療費控除を受けられるかどうかを、この線で確かめてください。
退職の年の書類の仕分け
| 書類 | 出す先 |
|---|---|
| 生命保険料控除証明書 | 年末調整を受けるなら転職先。受けないなら確定申告 |
| 地震保険料控除証明書 | 同上 |
| 空白の期間の国民年金・健康保険の保険料の証明書(社会保険料控除) | 同上 |
| 医療費の領収書と明細書 | 確定申告のみ。転職先には出さない |
| ふるさと納税の受領証明書 | 確定申告をするなら確定申告。しないならワンストップ |
| 給与所得の源泉徴収票(前職) | 年末調整を受けるなら転職先。確定申告にも使う |
年末調整を受けるなら、医療費以外は転職先に。医療費は確定申告に。確定申告をするなら、全部を確定申告に。この仕分けで、出し先を間違えません。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、控除で効いてくる点は3つです。
1. 生命保険料控除は、年末調整をする転職先に出す
年内に入社して年末調整を受けるなら、転職先の保険料控除申告書に証明書を添えます。按分されず、その年の分が丸ごと反映されます。
2. 医療費控除は確定申告でしか受けられない
転職先には出しません。退職の年は、差し引く額が10万円から下がることがあるので、確かめてください。
3. 書類を2つの封筒に分ける
「転職先の年末調整に出すもの」と「確定申告に出すもの」。医療費は必ず後者です。
手続きと期限
| 場面 | すること | 期限 |
|---|---|---|
| 10月頃 | 生命保険料・地震保険料の控除証明書が届く。保管 | ── |
| 転職先の年末調整(11月頃) | 保険料控除申告書に証明書を添えて提出 | 転職先の締切 |
| 年内 | 医療費の領収書を集め、保険金で補てんされた額を確認 | ── |
| 翌年 | 医療費控除の明細書を作成し、確定申告 | 還付の申告は翌年から5年以内 |
医療費控除の明細書は、領収書の1枚ずつではなく、医療機関ごと・人ごとにまとめて作成します。健康保険の医療費通知が使える場合もあります。作成の方法は国税庁の確定申告書作成コーナーで案内されています。
誤解されやすい点
「医療費控除は年末調整で受けられる」と思い込む
確定申告のみです(No.1120)。転職先に領収書を出しても処理されません。
「医療費が10万円を超えないと控除にならない」と思い込む
総所得金額等が200万円未満なら、差し引く額は5パーセントです。退職の年は当たることがあります。
「生命保険料控除の証明書は退職した自治体に出す」と思い込む
年末調整をするのは転職先です。年内に入社したなら転職先に出します。
「年の途中の入社だと、生命保険料控除は月割になる」と思い込む
按分されず、その年の分が全額対象です(No.2674)。
まとめ
- 生命保険料控除は年末調整でも確定申告でも受けられ、医療費控除は確定申告でしか受けられません(No.1140、No.1120)
- 生命保険料控除は一般・介護医療・個人年金の3区分で、新制度は各4万円・合計12万円、旧制度は各5万円・合計10万円が上限です。年内に転職先に入社して年末調整を受けるなら、転職先に控除証明書を出します。按分はありません(No.2674)
- 医療費控除は(医療費 − 補てんされた額 − 10万円)で、総所得金額等が200万円未満なら10万円の代わりに5パーセントを差し引きます。退職の年はこの線に当たることがあります
- 書類は「転職先の年末調整に出すもの」と「確定申告に出すもの」の2つの封筒に分けてください。医療費は必ず確定申告です
- 自分の控除は、転職先の担当部門と税務署で確認してください
よくある質問
退職の年に、共済組合の団体保険が終わりました。生命保険料控除はどうなりますか
その年に支払った分は、控除の対象になります。生命保険料控除は、その年に支払った生命保険料などについて受けるものなので(No.1140)、退職までに払った団体保険の保険料は、証明書があれば対象です。退職で契約が終わった保険の控除証明書がどこから届くか——共済組合か、保険会社か——を確かめ、届かなければ請求してください。年内に転職先に入社して年末調整を受けるなら、その証明書を転職先の保険料控除申告書に添えます。年末調整を受けないなら、確定申告に添付します。転職先で新たに団体保険に入った場合は、その分も同じ年末調整で控除されます。
退職後の空白の期間に、家族の医療費がかさみました。医療費控除は使えますか
使える可能性があります。No.1120によれば、医療費控除は自分または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が対象で、家族の分も含みます。そして、退職の年に総所得金額等が200万円未満になった場合、差し引く額が10万円ではなく総所得金額等の5パーセントになります。年の途中で退職して年内に再就職しなかった方は、この線に当たることがあります。医療費の合計から、保険金などで補てんされた額と、10万円または5パーセントの額を引いた残りが控除の対象です。確定申告で受けるので、領収書を保管し、医療費控除の明細書を作成してください。医療費通知が使える場合もあります。詳しくは税務署で確認を。
転職先の年末調整に、医療費の領収書を出してもよいですか
出しても処理されません。No.1120は、医療費控除は確定申告により受け、年末調整では受けられないと明記しています。転職先の年末調整に出せるのは、生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(空白の期間の国民年金・健康保険の保険料)などです。医療費控除は、翌年に自分で確定申告をして受けます。年内に転職先で年末調整を受けた方でも、医療費控除を受けたいなら別に確定申告が要ります。その場合、転職先の年末調整の後に交付される源泉徴収票を使って申告します。確定申告の全体は退職した年の確定申告に書いています。