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契約書の読み方|自治体の契約実務との差

契約の事務を担当してきた方が、民間の契約書を読むと違和感を覚えます。

前提が違うためです。

この記事では、違いの中身と、読み方を扱います。

自治体の契約には、方法と確定の要件が定められています

地方自治法第234条第1項です。

> 売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。

同条第2項です。

> 前項の指名競争入札、随意契約又はせり売りは、政令で定める場合に該当するときに限り、これによることができる。

同条第5項は、契約の確定について定めています。

> 普通地方公共団体が契約につき契約書又は契約内容を記録した電磁的記録を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長又はその委任を受けた者が契約の相手方とともに、契約書に記名押印し(略)なければ、当該契約は、確定しないものとする。

つまり、自治体の契約は、方法が法定され、確定の要件も定められているということです。

民間の契約は、この枠組みの外にあります。

ここが、最初に押さえる違いです。

違いの整理

項目自治体の契約民間の契約
方法法令で定められた方法当事者が決める
相手方の選定競争入札が原則交渉・選定は自由
条項標準の様式・約款が多い案件ごとに異なる
交渉の余地小さい大きい
確定の要件条文に定めがある契約の内容による
変更変更の契約の手続合意による

4行目が、最も大きな違いです。

自治体では、条項がほぼ決まっており、交渉する場面が限られます。

民間では、条項そのものが交渉の対象になります。

したがって、「読む」だけでなく、「どこを直すべきか」を考える必要があります。

民間の契約書で見るところ

条項見るところ
① 業務の範囲どこまでが約束の内容か
② 対価と支払金額、時期、条件
③ 期間・更新自動で更新されるか
④ 解除どういう場合に解除できるか
⑤ 損害賠償上限の定めがあるか
⑥ 秘密の保持範囲と期間
⑦ 知的財産成果物の権利の帰属
⑧ 再委託可否と条件

①と④が中心です。

①について。

「業務の範囲」が曖昧だと、後から追加の作業を求められます。

自治体の仕様書では、範囲が細かく書かれることが多いものです。

民間では、簡潔に書かれることがあります。

この違いに注意してください。

⑦について。

自治体の契約では、成果物の権利の扱いが約款で定められていることがあります。

民間では、案件ごとに異なります。

自治体の契約実務で身についていること

経験民間での読まれ方
仕様書の作成業務の範囲の設計
予定価格の積算原価の見積り
入札・選定の手続調達の手続
履行の確認・検査検収、品質の確認
変更の契約変更の管理
債権の管理支払の管理

1行目です。

仕様書を書いた経験は、「業務の範囲を言葉にする力」として読まれます。

民間の契約書で最も争いになるのが、この範囲です。

書き方は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。

読む順序

順見るところ
1業務の範囲(別紙・仕様を含む)
2対価と支払の条件
3期間と更新
4解除と損害賠償
5秘密の保持、知的財産
6変更の手続

1を最初に読んでください。

別紙や仕様書に本体があることが多いためです。

本文だけを読むと、範囲が分かりません。

6について。

変更の手続が定められていないと、後から追加の作業が生じたときに扱いが決まりません。

学ぶ前に考えること

確認すること内容
① すでにある経験仕様、選定、検査
② 応募したい求人の条件契約の知識が要件か
③ 目的法務に進むのか、調達か、受託の管理か
④ 期限応募の時期までに間に合うか

①を先に整理してください。

契約の実務を経験しているなら、その整理が学習より先です。

なお、資格を取れば転職できる、という関係にはありません。

どの立場で、何を判断してきたかが、評価の対象です。

経験の言い換えから相談することもできます。

どの転職先で効くか

領域使いどころ
① 行政が相手の事業発注者の視点
② 調達・購買選定、条件の確認
③ 契約・法務の部門条項の確認
④ 受託の管理履行、変更、検収
⑤ 営業の事務条件の整理

①と④が、経験と最も重なります。

探し方は公務員経験が活きる求人の探し方に整理しています。

面接で聞かれやすいこと

質問の趣旨用意しておくこと
何を担当したか件数、金額の規模、契約の種類
どこまで自分で決めたか専決できた事項
難しい局面の対応3件、経緯と結論
仕様の作り方範囲をどう決めたか
検査で見たところ確認の項目

4行目です。

仕様の範囲をどう決めたかは、民間でも同じ論点になります。

「過去の実績と、必要な体制から作業の量を見積もり、範囲を定めた」という形で説明できます。

なお、特定の事業者が分かる説明は避けてください。

守秘の義務は、退職した後も続きます。

よくある失敗

1. 本文だけを読む

別紙と仕様に本体があります。

2. 業務の範囲を確認しない

後から追加の作業が生じます。

3. 変更の手続を見ない

扱いが決まりません。

4. 「契約事務の経験」とだけ書く

発注する側の経験と書いてください。

5. 仕様書の作成を書かない

範囲を言葉にする力として読まれます。

6. 検査の経験を書かない

検収・品質の確認にあたります。

7. 交渉の余地がない前提で読む

民間では条項が交渉の対象です。

8. 資格を取れば進めると考える

何を判断してきたかが評価の対象です。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。

よくある質問

随意契約の事務しか経験がありません

それでも書けます。随意契約では、理由の整理と、相手方の選定の妥当性の説明が求められます。「政令の定めに該当する理由を整理し、決裁の資料を作成」「見積りを◯者から徴し、内容を比較のうえ選定」という形です。判断の根拠を作った経験として読まれます。なお、競争入札の経験がないこと自体は、問題になりません。求人票の応募条件を確認してください。「調達の経験」「契約の事務の経験」と書かれていれば、該当します。読み方は求人票の読み方|どこを見れば実態が分かるかに整理しています。

民間の契約書を、どう勉強すればよいですか

実物を読むのが近道です。公表されている契約書の様式や、業界団体が示す約款を読むと、条項の並び方が分かります。そのうえで、自分が扱ってきた自治体の契約書と比べてください。どの条項が増えているか、どの条項が簡潔になっているか。比べると、違いが具体に見えます。なお、体系的に学ぶ手段として、資格や検定を使うこともできます。ただし、応募の時期が近い場合は優先順位を下げてください。職務経歴書の作成と、求人を読む作業のほうが、時期に直接効きます。

法務の部門に移りたいのですが、応募できますか

応募条件によります。法務の部門では、企業の法務の経験や、法学の専門的な知識が要件とされることがあります。一方、契約の管理、調達、受託の管理の職種では、自治体の契約実務が直接使えます。まずは、求人票の「必須」の欄を読んでください。なお、行政が相手の事業を行う会社では、契約の相手方が自治体であるため、自治体の契約の仕組みを知っている人が必要とされます。法務という職種名で絞らず、仕事内容の欄で探してください。扱いは職種を変える転職と、変えない転職に整理しています。

出典

  1. 地方自治法 第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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