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財務諸表の読み方|公会計との違いから入る

予算と決算を扱ってきた方が、企業の財務諸表を読むと戸惑います。

数字の意味が違うためです。

この記事では、違いの出発点と、読む順序を扱います。

公会計には、2つの原則があります

地方自治法第208条です。

> 普通地方公共団体の会計年度は、毎年四月一日に始まり、翌年三月三十一日に終わるものとする。>> 2 各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもつて、これに充てなければならない。

会計年度独立の原則です。

同法第210条です。

> 一会計年度における一切の収入及び支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない。

総計予算主義の原則です。

この2つから、公会計の性格が決まります。

原則帰結
会計年度独立年度で区切って見る
総計予算主義一切の収入と支出を予算に計上する

年度ごとに、いくら入り、いくら出たか。

これが、公会計で見てきた数字です。

企業会計との違い

項目公会計企業会計
区切り会計年度(4月〜3月)事業年度(会社が定める)
中心となる考え方歳入歳出の管理損益と財政状態
見る書類予算書、決算書貸借対照表、損益計算書ほか
期間の扱い年度で独立継続を前提とする
目的予算の執行の適正利害関係者への報告

2行目が、最も大きな違いです。

公会計では、「予算のとおりに使ったか」が中心になります。

企業会計では、「もうかったか」「どれだけ資産と負債があるか」が中心です。

4行目について。

企業は、事業を続けることを前提に数字を作ります。

年度で区切って完結させる、という発想ではありません。

読む順序

順書類・項目分かること
1損益計算書1年の収益と費用、利益
2貸借対照表資産、負債、純資産の構成
3セグメントの情報事業ごとの規模
4推移複数年の変化

1から読んでください。

公会計の歳入歳出に最も近いのが、損益計算書です。

入ってきたもの(収益)と、出ていったもの(費用)。

ここから入ると、理解が進みます。

2について。

公会計では、資産と負債を一覧で見る機会が限られます。

貸借対照表は、その一覧です。

「何を持ち、何を負っているか」を、ある時点で切り取ったものと考えてください。

転職者が見るところ

財務の分析をするためではありません。

見るところ目的
① 事業の規模会社の大きさの把握
② 事業ごとの構成応募先がどの事業か
③ 継続の状況公告・報告が続いているか
④ 従業員数の推移体制の変化

②が中心です。

応募する職種が、中心の事業に属するのか、育てる段階の事業なのか。

求人票の仕事内容と突き合わせると、位置づけが見えます。

どこで見るかは応募前の企業調査で見るべき資料と有価証券報告書の読み方|転職者が見るべき箇所に整理しています。

公会計の経験の書き方

経験民間での読まれ方
予算の編成予算の策定、資源の配分
執行の管理予算の管理、進捗の確認
決算の作成実績の集計、報告
見積りの確認原価の見積りの妥当性の確認
債権の管理債権の管理と回収
財産の管理資産の管理

4行目です。

見積りの根拠を確かめてきた経験は、原価の管理に近い動作です。

書き方は公務員の職務経歴書|民間で読まれる形にする基本に整理しています。

経験の言い換えから相談することもできます。

学ぶ前に考えること

確認すること内容
① 応募したい求人の条件簿記などが要件か
② 目的会社を見るためか、業務で使うためか
③ すでにある経験予算、決算、見積り
④ 期限応募の時期までに間に合うか

②で分かれます。

会社を見るためであれば、読む順序を知るだけで足ります。

業務で使う(経理、管理、分析)のであれば、体系的な学習が要ります。

なお、資格を取れば転職できる、という関係にはありません。

要件として挙げられている場合に、条件を満たす材料になるというものです。

どの転職先で効くか

領域使いどころ
① 行政が相手の事業予算の年度と執行の仕組みが分かる
② 管理部門予算の管理、実績の集計
③ 事業の企画計画と実績の差異の説明
④ 受託の管理収支の管理
⑤ 公会計の支援制度の理解

①について。

受託や指定管理では、行政の予算の時期に合わせて動きます。

年度の区切り、執行の見込み、繰越の扱い。

これらを知っていること自体が、業務の前提です。

決算の資料から読み取ること

自治体の決算で見てきた項目と、企業の決算の項目は対応させられます。

公会計企業会計で近いもの
歳入収益(性質は異なります)
歳出費用
実質収支当期の損益(考え方が近い)
地方債の現在高負債
基金の現在高資産の一部
経常収支比率費用の構成の割合

⚠ 制度が異なるため、対応は厳密なものではありません。理解の入口として使ってください。

3行目です。

「入ってきたものから出ていったものを引く」という考え方は共通しています。

違うのは、企業では、現金の動きと損益が一致しない場合があるという点です。

この点だけ押さえておけば、読み始められます。

よくある失敗

1. 貸借対照表から読む

損益計算書から入ってください。

2. 財務の分析をしようとする

転職の判断では、規模と構成で足ります。

3. 1期の数字で判断する

推移と併せて見てください。

4. 予算の経験を書かない

予算の策定・管理として読まれます。

5. 見積りの確認を書かない

原価の見積りの妥当性の確認にあたります。

6. 目的を決めずに学習を始める

会社を見るためか、業務で使うためかで必要な範囲が違います。

7. 資格を取れば進めると考える

要件を満たす材料の1つです。

8. 応募先の事業の位置づけを見ない

求人票と突き合わせてください。

LINEで短く聞くこともできます

まとめ

行政が相手の求人もまとまっています。行政が相手の求人を見てみる。

よくある質問

簿記の資格は、取るべきですか

応募条件に記載がある場合に、満たす材料になります。記載がない場合、判断の中心にはなりません。目的で分けてください。会社を見るためであれば、読む順序を知るだけで足ります。一方、経理や管理の職種を目指すのであれば、体系的な学習が役立ちます。なお、予算や決算の実務を経験している場合、その経験を書くほうが具体です。「年間約◯億円の事業予算の編成と執行の管理を担当」という一文は、資格の有無に関係なく読まれます。応募の時期が近い場合は、書類の作成を優先してください。

公会計と企業会計の両方を求められる求人はありますか

あります。自治体を顧客とする会社、指定管理や受託を行う会社、公会計の支援を行う会社。これらでは、両方の理解が求められることがあります。とくに、自治体側の予算の時期と、自社の事業年度がずれるため、両方を踏まえて計画を立てる必要があります。求人票では、「自治体との取引の経験」「公共分野の知識」といった言葉で書かれることがあります。職種名ではなく、仕事内容の欄で探してください。扱いは公務員経験が活きる求人の探し方に整理しています。

財務の数字が読めないと、応募を避けるべきですか

避ける理由にはなりません。中途採用で問われているのは、その会社で何ができるかです。財務の分析を業務とする職種でなければ、読めることが要件になることは多くありません。なお、応募先の会社を見る目的であれば、規模と事業の構成が分かれば足ります。見るところは応募前の企業調査で見るべき資料に整理しています。分からない点は、面接で聞いて差し支えありません。「主力の事業はどちらになりますか」という聞き方で、構成は確認できます。

出典

  1. 地方自治法 第208条(会計年度及びその独立の原則)・第210条(総計予算主義の原則)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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