自治体別 / 市
川西市職員の転職|経験の活かし方と求人の探し方
この連載では、見る項目を変えると順位が大きく動く市を何度も扱ってきました。指数は上位なのに総額は下位、給料月額は下のほうなのに総額は2番目。そういう市ばかりです。
川西市は、そうなりません。
6つの項目すべてが、35団体のなかで22番目から28番目のあいだに収まります。
川西市の給与水準を、数字で確認する
総務省の調査によると、川西市の一般行政職は次のとおりです(令和6年4月1日現在)。
| 項目 | 川西市 | 35団体での順位 |
|---|---|---|
| ラスパイレス指数 | 98.9 | 25番目 |
| 平均年齢 | 41.1歳 | 25番目 |
| 平均給料月額 | 311,200円 | 27番目 |
| 諸手当月額 | 93,383円 | 22番目 |
| 平均給与月額 | 404,583円 | 26番目 |
| 地域手当以外 | 62,263円 | 28番目 |
平均給与月額(国ベース)は375,544円。地域手当は国の指定基準・実際の支給割合とも10%です。
地域手当10%を給料月額にかけると、概算で31,120円。諸手当93,383円からこれを引くと、残りは62,263円。総額の15.4%になります。
順位が動かないと、何が分かるのか
指数25番目、年齢25番目、給料月額27番目、総額26番目。
どこを見ても、だいたい同じ場所にいます。
これは、どの要素も突出していないし、どの要素も欠けていないということです。給料表の水準も、職員の年齢構成も、地域手当も、その外側も、すべてが真ん中よりやや下で揃っています。
だから、川西市の数字からは「この市はこういう特徴がある」という話が出てきません。
そして、それ自体がひとつの読み方になります。
東村山市と並べると、外側だけが揃います
同じ35団体のなかに、地域手当以外がほとんど同じ額の市があります。東村山市です。
| 項目 | 川西市 | 東村山市 | 差 |
|---|---|---|---|
| 地域手当 | 10% | 15% | — |
| 平均給料月額 | 311,200円 | 326,900円 | 東村山が15,700円上 |
| 地域手当の概算 | 31,120円 | 49,035円 | 東村山が17,915円上 |
| 地域手当以外 | 62,263円 | 62,120円 | 川西が143円上 |
| 平均給与月額 | 404,583円 | 438,055円 | 東村山が33,472円上 |
地域手当以外が143円しか違いません。
だから、総額の差33,472円は、給料月額の差15,700円と地域手当の差17,915円だけでできています。
外側が揃うと、差が2つの要素だけになります。
この連載では「総額の差のほとんどが地域手当以外だった」という例を何度も見てきました。今回はその逆です。
県内の数字は兵庫県職員の転職に、同じ県の市は伊丹市職員の転職に、外側がほぼ同じ市は東村山市職員の転職に整理しています。
市は、どういう団体か
川西市は、中核市でも施行時特例市でもない市です。開発許可や建築確認をどこまで市が処理するかは、市によって扱いが異なります。保健所は設置しないので、食品衛生や感染症対策は都道府県の仕事として残ります。
ところが、町村との間にははっきりした線が1本あります。
社会福祉法第14条第1項は、都道府県及び市(特別区を含む)は、条例で、福祉に関する事務所を設置しなければならないと定めています。一方、同条第3項では、町村は、条例で、その区域を所管区域とする福祉に関する事務所を設置することができるとされています。
市は必ず置く。町村は置いてもよい。ここが分かれ目です。
そして同条第6項によれば、市町村の福祉に関する事務所は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に定める援護、育成、更生の措置に関する事務のうち、市町村が処理することとされているものをつかさどります。
6つの法律にまたがる給付と措置を、1つの事務所で扱う。これが、市になった団体に必ずある仕事です。
職務経歴書に書くときは、「市役所の仕事」ではなく、担当した事務の名前で書いてください。市の人口と処理件数を添えると、読まれ方が変わります。
市役所の経験は、民間で何と呼ばれるか
| 市役所での仕事 | 求人票での言い方 |
|---|---|
| 予算の要求・査定、財政計画 | 予実管理、投資判断、経営企画 |
| 土地の権利関係の調整 | 用地開発、資産管理、法務 |
| 企業との立地・操業に関する調整 | 渉外、事業開発、法人営業 |
| 生活保護、児童・障害・高齢の措置 | ケース管理、審査業務、与信管理 |
| 課税・徴収、滞納整理 | 債権管理、与信、回収 |
| 里山・緑地の保全、鳥獣対策 | 資産管理、環境管理 |
| 都市計画、市街地の整備 | 用地開発、開発企画、都市開発 |
| 上下水道など公営企業 | インフラ運営、事業運営 |
| 市有施設の設計・積算・監督 | 発注者支援、施工管理 |
| 窓口・住民対応の業務設計 | カスタマーサポート、業務設計 |
| 内部管理(人事・財政・総務・会計) | コーポレート、管理部門 |
| 議会対応、条例・規則の改正 | 渉外、法務、規程整備 |
部署ごとの詳しい対応は自治体の部署別 仕事ガイドにまとめています。財政課であれば財政課の経験は民間で何と呼ばれるかで、さらに細かく分解しています。
「同じ場所に、別々の権利が重なる」実務
川西市役所の方に、いちばん強く伝えたいのがこの点です。
鉱業法第1条は、この法律が、鉱物資源を合理的に開発することによつて公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本的制度を定めることを目的とすると定めています。
そして第2条は、こう書いています。国は、まだ掘採されない鉱物について、これを掘採し、及び取得する権利を賦与する権能を有する。
土地を持っている人のものではない、ということです。
地面の上は所有者のもの。地面の下の鉱物は、国が別に権利を設定する。
同じ場所に、別々の権利が重なっています。
だから、掘るには必ず交渉が要ります。権利を得た人は、地面の上の人に断りなく入れません。地面の上の人は、下の鉱物を自由にできません。
どちらも正しい権利を持っていて、それでも一方だけでは何もできない。
実務は、次のような形になります。
- 登記簿を見ても、権利の全部は分からない
- 誰に話を通せばいいのかが、最初の仕事になる
- 関係する人が増えるほど、止まる
- そして、止まっていることに誰も気づかないことがあります
- 一人が同意しないだけで、全体が動かなくなる
企業でも、同じ形の問題があります。
共同開発の成果、外注先と一緒に作った図面、複数部署が触ったデータ、買収した会社から引き継いだ契約、社員が作った著作物。どれも「誰のものか」が一行では書けません。
そして多くの企業で、こうなります。作っているときは、誰も権利の話をしません。急いでいるし、うまくいくかも分からないからです。
そして、うまくいったあとに揉めます。
そのときにはもう、関係者が増えすぎています。
始める前に決めておけば5分で済むことが、あとからだと何か月もかかる。
求人票では、法務、知的財産、契約管理、アライアンス、用地開発といった名前で書かれています。
書くときのこつは、揉めた話だけを書かないことです。権利が重なっている場所をどう見つけたか、誰に話を通すべきだと判断したか、同意が取れない相手にどう向き合ったか、そして次から同じことが起きない形にできたか。この形にすると、そのまま職務能力として読まれます。
川西で、どの経験が値になるか
1. 権利の重なりを先に洗い出した経験
始める前に「誰に話を通すか」を出す。これができる人は、企業にほとんどいません。
2. 一人の反対で止まった案件を扱った経験
全員の同意が要る場面をどう進めたか。ここが実務のいちばん難しいところです。
3. 記録に残らない権利を見つけた経験
登記簿にも契約書にも書いていない関係を見つけた経験は、そのまま知的財産や契約管理で効きます。
4. 次から起きない形にした経験
個別に解決するのではなく、手順のほうを変えた経験が強く読まれます。
県内・県外の求人を見るときに
川西市は兵庫県の南東部にあり、大阪府に接しています。大阪と阪神間の両方を担当エリアとする求人で、拠点がここにあること自体が条件になることがあります。
まず職種で絞り、そのあとに勤務形態と担当エリアを確認する。勤務地から検索を始めると、リモート可や週数日出社の求人が最初から視界に入りません。
自分の経歴がどう言い換えられるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。
職務経歴書に、市役所の仕事をどう落とすか
制度名ではなく、判断したことを書く
「用地交渉を担当」では読み手に何も残りません。権利が重なっている場所をどう見つけ、誰に話を通すべきだと判断したか。
まとまらなかった話を書く
同意が取れずに終わった案件があるはずです。そのとき何をしたかを書けると、実務があったことが伝わります。
規模を必ず書く
市の人口、関係者の数、対象の面積、かかった期間。数字を添えないと規模が伝わりません。
技術職の場合は、探し方が変わる
発注者側の経験そのものが職種になる
「発注者支援」という職種が、建設コンサルタント業界には確立しています。設計の審査、積算の確認、工事の監督、住民説明。市役所でやってきたことが、そのまま職務内容として書かれた求人です。
資格が入口で効く
技術士、施工管理技士、測量士、建築基準適合判定資格者、公害防止管理者、エネルギー管理士。実務経験の年数が受験要件になっているものは、在職中でなければ積めません。取れるものがあるなら、動く前に取っておいてください。
斜面と造成を見てきた技術者は、扱える人が限られる
丘陵地の宅地、擁壁、切土と盛土、古い造成地の点検。傾斜のある土地で構造物を管理してきた経験は、建設コンサルタントや住宅・不動産の各社から求められます。
面接で必ず詰められる2つのこと
「意思決定のスピードに耐えられるか」
行政は手続きの段数が多く、決裁を経て動きます。民間は月次で数字を締め、その場で方針を変えます。稟議の段数を弁解せず、自分の判断で動かした範囲を具体的に答えてください。
「数字への意識があるか」
「利益を意識したことはありますか」という形で聞かれます。用地や施設に関わったなら、対象の面積、関係者の数、契約の金額、かかった期間で答えてください。「行政なので利益はありません」と答える必要はありません。
在職中に進めるときの注意点
顔が知られている前提で動く
市内の企業の多くは、市役所と何らかの接点を持っています。取引先、許認可の相手方、補助事業の対象。在職中の活動が伝わりやすい環境だという前提で進めてください。応募先が現在の担当業務の相手方である場合は、とくに慎重に扱う必要があります。
服務上の扱いを先に確かめる
在職中に得た情報を持ち出すことは避けなければなりませんし、退職後の営業活動についても扱いを確認しておいたほうが安全です。判断に迷う場合は、応募の前に人事担当課に制度上の取扱いを確認してください。
面接の日程は、議会日程から逆算する
地方自治法第211条は、長が毎会計年度予算を調製し、年度開始前に議会の議決を経なければならないと定めています。市町村は年度開始前20日までに予算を議会へ提出するようにしなければならない、とも書かれています。決算は、出納閉鎖後3か月以内の長への提出、監査委員の審査、議会の認定という順です(第233条)。予算編成の山と定例会の会期中は、平日日中の面接を入れるのが難しくなります。
在職中に決める
公務員には雇用保険が適用されないため、辞めてから探すと収入のない期間がそのまま持ち出しになります(公務員に雇用保険がない理由)。
まとめ
- 川西市の一般行政職はラスパイレス指数98.9、平均給与月額404,583円(令和6年4月1日現在・総務省調査)
- 6つの項目すべてが、35団体で22番目から28番目に収まります
- どの要素も突出せず、どの要素も欠けていない。数字から「特徴」が読み取れません
- 東村山市とは地域手当以外が143円差。だから総額差33,472円は給料月額と地域手当だけでできています
- 地域手当10%の概算31,120円を引くと、残る62,263円(総額の15.4%)が人ごとに違う部分
- 特徴がない団体では、団体の平均があなたの額を説明しないことが、いちばんはっきり出ます
よくある質問
どの項目も25番目前後なのは、良いことですか悪いことですか
どちらでもありません。どの要素も突出せず、どの要素も欠けていないということです。ただし、団体の数字から「うちはここが厚い」という説明ができなくなります。
東村山市との差が給料月額と地域手当だけというのは、どういう意味ですか
地域手当以外が143円しか違わないからです。総額の差33,472円は、給料月額の差15,700円と地域手当の差17,915円でほぼ全部が埋まります。外側が揃うと、差が2つの要素だけになります。
諸手当93,383円のうち、自分に関係するのはどこですか
地域手当10%の概算31,120円を除いた、62,263円です。時間外の量、担当する業務、役職、住んでいる場所で決まります。総額に占める割合は15.4%です。