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業界研究 / ITコンサルティング

ITコンサルティングの年収と働き方|公務員から移るとどう変わるか

ITコンサルティングへの転職を考える財政課の方から、「移ったら給与と働き方はどう変わるのか」という質問を受けます。先に断っておきます。この記事には、ITコンサル業界の年収の相場やレンジは書いていません。会社のタイプ(総合系、IT専門、監査法人系)と職位で差が大きく、当社が裏を取った統計として示せる数字がないからです。求人ごとの条件は、掲載中の求人にそれぞれ書いてあります。

代わりにこの記事で整理するのは3つです。「公務員の処遇は法律と条例で決まり、民間の処遇は就業規則と労働契約で決まる」という仕組みの違い、ITコンサルに固有の働き方の構造(案件単位のアサイン、常駐の形、裁量労働制の対象業務の該当性)を法律の側から読むこと、そして応募先の条件をどこで、どの順で確かめればよいかです。財政課の方は、給与条例と勤務時間条例の構造を知っているので、就業規則と労働条件通知書を同じ目で読めば、条件の確認は難しくありません。

業界の構造と職種ごとの評価はITコンサルティングは公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——処遇に影響する事業の形

ITコンサルの公共部門は、自治体のDX計画、調達支援、標準化移行のPMO、業務改革を受託し、複数年度の支援は債務負担行為(地方自治法第214条)で予算を組みます。処遇の観点で押さえておきたいのは、コンサルの処遇は「職位(アナリスト、コンサルタント、マネージャーなど会社ごとの呼び方)」ごとに決まり、職位の昇格が処遇の変化の中心になる点です。公務員の給料表が「級と号給」で組まれているのと似ていますが、昇格の基準は会社ごとの評価制度で決まり、法律や条例の保障はありません。財政課の方が応募する公共部門の枠が、どの職位で入るか、その職位の処遇と昇格の基準はどうなっているかを確かめるのが出発点です。

公務員と民間で「決まり方」がどう違うか

項目公務員(地方)民間(ITコンサルを含む)
給与の決まり方条例で定める(地方公務員法第24条第5項)就業規則と労働契約で定める。常時10人以上の会社は賃金の決定・計算・支払方法・昇給を就業規則に記載し届け出る義務(労働基準法第89条第2号)
賞与期末手当・勤勉手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の明示事項。制度がない会社もありうる(労働基準法施行規則第5条第5号)。業績連動の賞与が処遇の大きな部分を占める会社がある
退職金退職手当として条例で定める(地方自治法第204条第2〜3項)「定めをする場合」の記載事項。制度がない会社もありうる(労働基準法第89条第3号の2)
時間外の扱い条例・規則で定める法定時間を超えた労働に割増賃金の支払義務(労働基準法第37条)。裁量労働制は対象業務に該当する場合に限られる(後述)
年次有給休暇条例で定める雇入れから6か月継続勤務・8割以上出勤で10労働日、以後勤続に応じて加算(労働基準法第39条)
身分の保障分限処分の事由は法律で限定解雇は客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性を欠くと無効(労働契約法第16条)。労働契約法は公務員には適用されない(同法第21条第1項)

公務員の処遇は「法律と条例に必ず書いてある」のに対し、民間の処遇は「定めがあるかどうかから確かめる」項目(賞与、退職金)がある——財政課の方が条件を読み違えるのは、ほとんどがここです。決まり方の違いの詳細は、GovTech向けに書いた自治体向けSaaS・GovTechの年収と働き方と同じ構造です。

ITコンサルに固有の働き方——法律の側から読む

1つ目は、案件単位のアサイン。コンサルの働き方は、案件(プロジェクト)に配属され、その案件の期間中はその自治体の支援に専念し、終われば次の案件に移る形が中心です。案件ごとに、担当する自治体、常駐の有無、働く場所、繁忙の時期が変わります。公務員の「所属課に配属され、年度ごとに業務が回る」働き方とは、時間の単位が違います。面接では「公共部門の案件の期間はどのくらいが多いか」「案件の間の期間はどう過ごすか」「案件の選択にどの程度関われるか」を聞いてください。

2つ目は、自治体の年度の周期と繁忙。自治体からの受託は会計年度に合わせて単年度の契約になることが多く、年度末に成果物の納期が集中しやすい構造があります。複数年度の支援は債務負担行為(地方自治法第214条)で組まれるので、「受託案件のうち複数年度の契約になっている割合」を聞けば、年度末の実態が具体的に分かります。財政課の方は、この道具を予算の側で扱ってきました。

3つ目は、常駐の形。自治体の庁舎に常駐して支援を行う案件があります。常駐の形は、労働者派遣(自己の雇用する労働者を、雇用関係の下に、かつ他人の指揮命令を受けて、他人のために労働に従事させるもの——労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第2条第1号)か、請負・委託(自社の指揮命令の下で自治体の庁舎で業務を行うもの)かで、指揮命令の主体が違います。コンサルティングの案件は請負・委託の形が中心ですが、自分の常駐の形と指揮命令の主体を、労働条件通知書と契約の形で確かめてください。

4つ目は、裁量労働制の対象業務の該当性。労働基準法第38条の3の専門業務型裁量労働制の対象業務は、施行規則第24条の2の2第2項に列挙されています。この中に「コンサルティングの業務」という項目はなく、IT系のコンサルで該当しうるのは第2号の「情報処理システムの分析又は設計の業務」です。調達支援やPMO、業務改革の助言が、この「分析又は設計の業務」に当たるかは、業務の実態によります。また、労働基準法第38条の4の企画業務型裁量労働制は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務を対象とし、労使委員会の決議などの要件があります。裁量労働制が適用されると言われた場合、自分の業務がどちらの制度のどの対象業務に当たるとされているか、労使協定や労使委員会の決議の内容を確かめてください。該当しない業務に裁量労働制を適用することはできません。

労働条件通知書の読み方——確かめる順序

労働基準法第15条第1項により、会社は労働契約の締結に際して労働条件を明示する義務があり、明示事項は労働基準法施行規則第5条に列挙されています。オファーの段階で受け取る労働条件通知書は、この順で読んでください。

1. 契約期間(第1号)と就業場所・業務の変更の範囲(第1号の3)。コンサルは案件ごとに働く場所が変わるので、就業場所の変更の範囲(常駐先の範囲、転勤の有無)は必ず見ます。業務の変更の範囲に「民間企業向けの部門への配置転換」が含まれていないかも確かめます。公共部門の枠で入ることを前提にしている場合、この範囲は交渉の対象です。

2. 始業・終業、所定労働時間を超える労働の有無、休憩、休日、休暇(第2号)。裁量労働制が適用される場合は、その旨とみなし労働時間が書かれているかを見ます。常駐の場合、常駐先の勤務時間に合わせるのかも確かめます。

3. 賃金の決定・計算・支払方法、締切・支払時期、昇給(第3号)。月給か年俸か。年俸制でも、法定時間を超えた労働には割増賃金の支払義務があります(労働基準法第37条)。業績連動の賞与がある場合、固定の部分と変動の部分の割合、変動の基準(会社の業績か、個人の評価か)を確かめます。

4. 退職に関する事項(第4号)、退職手当(第4号の2)、賞与・臨時の賃金(第5号)。第4号の2と第5号は「定めをする場合」の事項なので、書かれていなければ制度がない可能性があります。書かれていない場合は、就業規則を見せてもらい、制度の有無を確認してください。

条件の読み方や、どこまで交渉できるかは、一度話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

社会保険と給付——切り替わるもの、新しく対象になるもの

年金と健康保険。地方公務員は地方公務員共済組合の組合員ですが、民間の適用事業所に雇用されると厚生年金保険の被保険者になり(厚生年金保険法第9条)、健康保険は会社が加入する協会けんぽか健康保険組合に切り替わります。手続きは厚生年金に切り替える場合と保険料はどれが安いのか、の考え方に整理しています。

雇用保険。地方公務員は、離職時に条例等で受ける給与の内容が求職者給付等を超える場合、雇用保険法の適用除外です(雇用保険法第6条第6号)。民間に移ると被保険者になり、育児休業給付金(同法第61条の7)など、公務員の間は対象外だった給付の対象になります。

退職手当。公務員の退職手当は条例で決まり、退職時に支給されて完結します(自己都合退職と定年退職で何が変わるか)。民間の退職金は「定めがある場合」の制度で、転職先に制度があるか、勤続何年から支給されるかを確かめる必要があります。公務員の退職手当と民間の退職金は通算されません。

掲載中の求人は、職種・雇用形態・勤務地・条件が一覧で見られます。会社ごとの条件を並べて比べるには、こちらが早いです。財政・会計の経験が効く求人を見てみる

まとめ

よくある質問

コンサルタントは裁量労働制と言われました。調達支援やPMOの業務でも適用されるのですか

専門業務型裁量労働制(労働基準法第38条の3)の対象業務は施行規則第24条の2の2第2項に列挙されており、「コンサルティングの業務」という項目はありません。IT系で該当しうるのは「情報処理システムの分析又は設計の業務」(第2号)で、調達支援やPMO、業務改革の助言がこれに当たるかは業務の実態によります。企画業務型裁量労働制(第38条の4)は、事業の運営に関する事項についての企画・立案・調査・分析の業務を対象とし、労使委員会の決議などの要件があります。適用されると言われた場合、自分の業務がどちらの制度のどの対象業務に当たるとされているか、労使協定や労使委員会の決議の内容を見せてもらってください。該当しない業務に適用することはできません。

案件が終わると、次の案件まで何をするのですか

会社と部門によりますが、次の案件の提案活動(プロポーザルの企画書の作成)、社内の研修、前の案件の振り返りなどに充てられることが一般的です。案件の間の期間が長く続く場合の扱い(評価への影響、配置の変更)は、会社ごとの評価制度で違うので、面接で「案件の間の期間はどう過ごすか」「その期間は評価にどう影響するか」を聞いてください。公務員の「所属課に配属され、年度ごとに業務が回る」働き方とは時間の単位が違うので、この点は入社前に理解しておく必要があります。

業績連動の賞与が大きいと聞きました。公務員の期末・勤勉手当とどう違いますか

公務員の期末手当・勤勉手当は条例で定められ、支給の月数などが条例と規則で決まっています(地方自治法第204条第2〜3項)。民間の賞与は「定めをする場合」の制度で(労働基準法施行規則第5条第5号)、会社の業績と個人の評価で変動する設計にしている会社では、固定の部分と変動の部分の割合、変動の基準を就業規則と労働条件通知書で確かめる必要があります。「年収」として提示された額のうち、どこまでが固定でどこからが変動かを分けて読んでください。変動の部分を固定と思い込んで生活設計をするのが、典型的な読み違えです。

出典

  1. 地方公務員法 第24条(給与、勤務時間その他の勤務条件の根本基準)|e-Gov法令検索
  2. 地方自治法 第204条(給料、手当及び旅費)/第214条(債務負担行為)|e-Gov法令検索
  3. 労働基準法 第15条(労働条件の明示)/第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)/第38条の3(専門業務型裁量労働制)/第38条の4(企画業務型裁量労働制)/第39条(年次有給休暇)/第89条(就業規則の作成及び届出の義務)|e-Gov法令検索
  4. 労働基準法施行規則 第5条(労働条件の明示事項)/第24条の2の2(専門業務型裁量労働制の対象業務)|e-Gov法令検索
  5. 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第2条(用語の意義)|e-Gov法令検索
  6. 労働契約法 第16条(解雇)/第21条(適用除外)|e-Gov法令検索
  7. 雇用保険法 第6条(適用除外)/第61条の7(育児休業給付金)|e-Gov法令検索
  8. 厚生年金保険法 第9条(被保険者)|e-Gov法令検索

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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