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業界研究 / シンクタンク・調査研究

シンクタンク・調査研究の志望動機|公務員からの転職でどう組み立てるか

シンクタンク・調査研究への志望動機で、財政課の方が最も陥りやすい失敗は、「政策を研究したい」「自治体を外から支えたい」という大きな言葉で、財政課の具体的な経験と組織の業務がつながっていないことです。シンクタンクの面接官は研究員や部門長で、「政策への関心」は自分たちが毎日の仕事で持っているものなので、応募者から聞いても評価の材料になりません。聞きたいのは、「この人は、自分たちが調べても手に入らない何を持ち込むのか」です。

財政課の経験を持つ方がこの業界に持ち込めるのは、自治体の財政の数字を「作った側」として制度の裏側と一緒に読めること、計画の財政フレームを自治体の作法で組めること、そして議会と住民がどの説明で納得するかを知っていることです。志望動機は、この「持ち込めるもの」を軸に組み立てます。

この記事では、シンクタンクの志望動機を「なぜ発注者側から受注者側へ」「なぜ調査研究か」「なぜこの組織か」の3層で組み立てる方法、財政課の経験から素材を取り出す手順、効く言い方と効かない言い方、服務の線を整理します。志望動機の一般論は公務員からの転職で志望動機をどう組み立てるかと自治体向け事業の会社への志望動機に、業界の構造と職種ごとの評価はシンクタンク・調査研究は公務員のどの経験を評価するかに、選考の流れは選考フローと面接で見られている観点に書いています。

業界構造の要点——志望動機の土台になる事実

シンクタンク・調査研究の公共部門は、国・自治体から総合計画・総合戦略(まち・ひと・しごと創生法第10条に基づく市町村の総合戦略は策定が努力義務)の策定支援、公共施設等総合管理計画(総務省が2014年に指針を示したもの)、行政評価、財政分析、政策調査を受託します。自治体からの受託は、地方自治法第234条の契約方法のうち施行令第167条の2第1項第2号の「性質又は目的が競争入札に適しない」契約としてプロポーザル方式で選ばれることが多く、成果物と企画提案書の質が組織の受注能力を決めます。

志望動機に効くのはこの構造の裏側です。研究員の多くは自治体の財政を「調べて理解した」側で、決算統計や健全化判断比率(地方公共団体の財政の健全化に関する法律第3条により毎年度公表される4つの比率)を「実際に算定した」側は少数です。志望動機は「研究員になりたい」ではなく、「作った側の目を、調べる側の組織に持ち込む」を軸にします。

志望動機の3層——「なぜ発注者側から受注者側へ」「なぜ調査研究か」「なぜこの組織か」

層問われていること財政課の経験からの答え方
① なぜ発注者側から受注者側へ決める立場を捨て、提案して選ばれる立場に移る理由「1つの自治体の査定で変えられる範囲」の限界を、具体的な計画や数字で語る。辞める理由を無理に前向きに変換しない
② なぜ調査研究か民間の中で、なぜ受託調査・計画策定支援か財政課で見た「成果物に財政の視点が足りない」場面を、改善したい対象として語る
③ なぜこの組織か同業他社ではなく、なぜここかその組織が受託している業務(財政分析、公共施設マネジメント、総合計画、国の政策調査)と自分の担当業務の重なり。実績の中で自分が担える部分

①だけの志望動機(「発注者側にいて限界を感じた」)は、②③がないので通りません。②③だけの志望動機(「御社の研究に共感した」)は、①がないので「なぜ決める側を辞めるのか」の質問で崩れます。3層すべてを、財政課の具体的な業務で埋めるのが型です。

財政課の経験から動機の素材を取り出す手順

素材は、財政課で「受託した成果物を発注者側で読んだ」場面と、「数字を作った」場面にあります。次の順で棚卸しをしてください。

1. 受託した成果物を読んだ場面を書き出す。総合計画の財政フレーム、総合管理計画の更新費用の推計、財政分析の報告書、行政評価の結果——財政課は、シンクタンクが納品した成果物を、発注者側で読んで査定に使っています。どの成果物を、何のために読んだかを書き出します。

2. それぞれで「財政の視点が足りなかった」場面を書き出す。財政フレームの歳入見通しが交付税の算定の仕組みを踏まえていなかった。更新費用の推計に起債の償還と基金の取崩しの年度計画が重なっていなかった。財政分析が比率の説明で終わり、比率の限界(何が読めないか)に触れていなかった。この「足りなかった場面」が、シンクタンクの業務の中で、財政課の経験が埋められる部分です。

3. 自分が数字を作った場面を添える。決算統計の作成、健全化判断比率の算定、交付税の算定、中期財政計画。「調べて理解した」人にはない「作った側」の経験として、算定の裏側で何を判断したかを書きます。

4. 応募先の実績と重ねる。その組織が公開している業務実績(財政分析、公共施設マネジメント、総合計画の策定支援、国の政策調査)を読み、自分の「足りなかった場面」がどの業務に当たるかを確かめる。重なる部分が③の素材、重ならないが自分が困っていた部分が「入社後にやりたいこと」の素材になります。

地方自治法第2条第14項は、地方公共団体が事務を処理するに当たって「最少の経費で最大の効果を挙げる」ことを求めています。財政課はこの条文を、査定の場面で毎年使っています。「最少の経費で最大の効果」を、査定する側ではなく、計画と示唆を提案する側から実現したい——この言い方は、財政課の経験とシンクタンクの業務を1本でつなぐ軸になります。

効く言い方・効かない言い方

効かない言い方なぜ効かないか効く言い方
「政策を研究したい」「自治体を外から支えたい」面接官(研究員)が毎日持っている関心で、応募者から聞いても材料にならない「財政フレームの歳入見通しを、交付税の算定の仕組みまで踏まえて組める側に回りたい」
「財政課にいたので財政は分かります」「分かる」の中身がない。調べて理解した研究員との差が示せない「健全化判断比率を算定していたので、比率で読めることと読めないことを分けて示唆が書ける」
「御社の研究に共感しました」実績のどこに自分が関われるかがない「御社の公共施設マネジメントの支援実績の中で、更新費用と起債・基金の年度計画を重ねる部分を担いたい」
「自治体のことなら何でも分かります」自分の自治体の運用を一般化している。複数の自治体・全国を相手にする視点がない「私の自治体では交付税の算定をこう見ていたが、自治体ごとに違う。共通の制度と自治体ごとの運用を分けて調査に反映したい」
「発注者側にいて限界を感じた」①だけで終わっている「査定で変えられるのは自分の自治体の計画まで。成果物の側なら、同じ視点を複数の自治体に届けられる」

共通するのは、効く言い方はすべて「財政の数字と制度の具体」と「作った側であること」と「複数の自治体」のいずれかを含んでいることです。効かない言い方は、どれも欠けています。

自分の「足りなかった場面」が、どの組織のどの業務に当たるのかは、一人で調べるより話しながら整理したほうが早いことが多いです。どの経験に値が付くのかから相談できます。

組織のタイプ別——「なぜこの組織か」の作り分け

シンクタンク・調査研究と一口に言っても、組織の形は分かれます。③の層は、タイプごとに作り分けが要ります。

金融機関や企業グループの系列で、公共部門を持つ組織。自治体向けの計画策定支援と、国向けの政策調査の両方を受託していることが多いタイプです。③は「公共部門の実績の中で、財政の側を担いたい」を軸にしますが、公共部門の比重と、自分が入る部門を確かめてから書くことが前提です。民間向けの部門に配属される可能性がある場合、その点も面接で確かめます。

独立系で、自治体向けの計画策定支援が中心の組織。総合計画、総合戦略、総合管理計画の策定支援を多くの自治体から受託しているタイプです。財政課の経験が最も直接に効き、③は「計画の財政フレームを自治体の作法で組める」を軸にします。自分の自治体がその組織に発注していた場合は、服務の線(後述)を先に確かめます。

特定の政策分野(財政、地方自治、社会保障など)に特化した組織。研究の比重が高く、学位や研究実績が重視されることがあります。③は「財政の数字を作った側の経験を、研究の側に持ち込む」を軸にしますが、応募要件(学位、研究実績)を先に確かめてから書くことが前提です。

どのタイプでも共通するのは、「その組織が何を受託しているか」を業務実績で確かめてから書くことです。タイプを取り違えた志望動機は、一次面接の最初の質問で分かります。

服務の線——志望動機に書いてよいこと、書けないこと

志望動機は「足りなかった場面」を書く文章なので、自治体の内部情報を書き込みやすいという落とし穴があります。

地方公務員法第34条の秘密を守る義務は、退職後も続きます。志望動機に、未公表の内部情報(未公表の財政見通し、査定の内訳、個別の受注者への評価、プロポーザルの審査の内容)を書いてはいけません。「納品された財政フレームを交付税の仕組みを踏まえて作り直した」という業務の性質は書けますが、「○○社の成果物は○○が誤っていて」のような内容は、事実であっても書けません。守秘義務は退職後も続くかに線引きを整理しています。

もう1つは、在職中に応募先の組織の調達に関わっている場合です。委託料の査定、プロポーザルの審査、契約の担当に該当する場合、選考の中で隠さず伝え、応募の時期と入社後の担当の切り分けを組織側と相談してください。退職後に元の職場へ働きかけることは地方公務員法第38条の2で規制されており、営業職やプロポーザル対応の職種では、元の自治体を担当から外す配慮を組織が求めることがあります。再就職者による働きかけの規制に整理しています。

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まとめ

よくある質問

財政課で決算統計や健全化判断比率を担当したことがなく、予算査定が中心でした。素材はありますか

あります。予算査定で、担当課が提出した計画や、シンクタンクが納品した成果物(総合計画の財政フレーム、施設の更新計画、行政評価の結果)を読んで査定に使っていれば、「発注者側で成果物がどう読まれるか」を知っています。「成果物のこの部分が査定で使えなかった、この部分は使えた」を書き出せば、それが「足りなかった場面」の素材です。決算統計や比率の算定に関わっていないことは正直に示し、「読む側の経験」を軸に組み立ててください。

「なぜ研究員になりたいのか」と聞かれたら、どう答えればよいですか

「研究員になりたい」ではなく、「財政の数字を作った側の経験を、調べる側の組織に持ち込みたい」と、最初に軸を示して答えます。そのうえで、財政課で見た「成果物に財政の視点が足りなかった場面」を1つ具体的に話し、「それを直す側に回りたい」と続けます。研究の手法や報告書の執筆は入社後に学ぶことを正直に言い、自分の側の知識を研究員に分かる言葉で説明することに集中してください。

自分の自治体が発注していた組織に応募します。志望動機で自治体の名前を出してよいですか

自治体の名前を出すこと自体は問題ありませんが、2つの点に注意してください。1つは、未公表の情報(その組織との契約の内容、プロポーザルの審査、成果物への内部の評価)を書かないこと(地方公務員法第34条)。もう1つは、在職中にその組織の調達に関わっていた場合、志望動機に書く前に選考の中で伝え、応募の時期と担当の切り分けを相談することです。志望動機は「元の自治体を担当しない前提で、自治体側で成果物がどう読まれるかを知っている点を活かしたい」という形で書くのが安全です。

出典

  1. 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 第3条(健全化判断比率の公表等)/第4条(財政健全化計画)|e-Gov法令検索
  2. まち・ひと・しごと創生法 第10条(市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略)|e-Gov法令検索
  3. 地方自治法 第2条第14項(最少の経費で最大の効果)/第234条(契約の締結)|e-Gov法令検索
  4. 地方自治法施行令 第167条の2(随意契約)|e-Gov法令検索
  5. 地方公務員法 第34条(秘密を守る義務)/第38条の2(再就職者による依頼等の規制)|e-Gov法令検索
  6. 公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進|総務省

監修

松岡 良次

株式会社エージェントベスト代表。大手人材会社およびスタートアップ人材企業にて、IT・スタートアップ・メガベンチャー企業の採用支援に従事。独立後はIT・スタートアップ・コンサル領域に特化し、20〜30代のキャリア支援を行う。(厚生労働大臣許可 13-ユ-316964)

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