制度とお金 / 失業給付と税金
無職期間の社会保険料と控除
退職から入社まで、たとえば2か月あく。その2か月、年金と健康保険の保険料は、自分で納めます。在職中は給与から天引きだったものが、納付書で、自分の口座から出ていく形に変わります。
この記事で扱うのは、その空白の期間の保険料が、いくらの桁で、どう納め、そして税でどう扱われるかです。結論を先に言うと、納めた保険料は、全額が社会保険料控除の対象です。証明書を、転職先の年末調整か確定申告に出せば、その分の税が戻ります。
地方公務員等共済組合法、国税庁の案内、日本年金機構の案内が根拠です。税と社会保険は個別性が高い分野なので、一般的な取扱いを書きます。自分の額と手続きは、共済組合、市区町村、税務署で確認してください。年金の切替えは国民年金に切り替える場合、資金の面は退職手当をあてにした資金計画の考え方に書いています。
空白の期間に出ていく保険料——2つ
| 保険料 | 在職中 | 空白の期間 |
|---|---|---|
| 年金 | 厚生年金の保険料を給与から天引き | 国民年金の第1号被保険者として自分で納める。定額(日本年金機構の案内では令和8年度は月額17,920円) |
| 健康保険 | 共済組合の短期給付の掛金を給与から天引き | 任意継続組合員になるか、国民健康保険に入るかを選び、自分で納める |
年金は定額で選択の余地がなく、健康保険は2つから選びます。配偶者が第3号被保険者だった場合は、配偶者の国民年金の保険料も発生します(退職時の年金の手続き)。
健康保険の選択1:任意継続組合員
地方公務員等共済組合法第144条の2は、退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であった者が、退職の日から起算して20日を経過する日までに申し出ることで、引き続き短期給付(健康保険に相当する給付)を受けられると定めています。これが任意継続組合員です。
| 項目 | 内容(第144条の2) |
|---|---|
| 要件 | 退職の日の前日まで引き続き1年以上組合員であったこと |
| 申出の期限 | 退職の日から起算して20日を経過する日まで(正当な理由があると組合が認めた場合はその日まで) |
| 期間 | 任意継続組合員となった日から2年を経過したときに資格を喪失(第5項第1号) |
| 掛金 | 短期給付と福祉事業に係る掛金と、地方公共団体の負担金に相当する額を本人が負担(第2項)。在職中の掛金に、自治体が負担していた分が加わる形 |
| 前納 | 将来の一定期間の掛金を前納できる(第3項) |
| 注意 | 初回の掛金を払込期日までに払わないと、任意継続組合員にならなかったものとみなされる(第4項) |
在職中の健康保険の掛金は、自治体が同額程度を負担していました。任意継続では、その負担金に相当する分も本人が払うので、給与明細で見ていた掛金のおよそ2倍が目安になります。正確な額は共済組合が政令の基準で定めるので、退職前に共済組合に聞いてください。
期限は退職の日から20日です。年金の届出の14日とも、退職手当の支給日とも違う、独立した期限です。過ぎると選べなくなります。
健康保険の選択2:国民健康保険
市区町村の国民健康保険に入る形です。保険料は前年の所得と世帯の構成で市区町村が計算します。退職の翌年度は、退職の年の所得が基礎になるので、所得が減れば保険料も下がります。逆に、退職した年度は前年(在職中)の所得が基礎なので、高めに出ることがあります。
| 比較の軸 | 任意継続 | 国民健康保険 |
|---|---|---|
| 額の決まり方 | 在職中の掛金+自治体の負担金相当(上限あり) | 前年の所得と世帯の構成 |
| 扶養 | 在職中と同じ扶養の扱いが続く | 扶養の概念がなく、家族も1人ずつ加入して保険料が計算される |
| 期限 | 退職の日から20日 | 資格喪失後、速やかに市区町村で手続き |
| 期間 | 最長2年 | 転職先の健康保険に入るまで |
扶養している家族が多い方は任意継続が有利になりやすく、単身で退職の年の所得が低い方は国民健康保険が有利になることがあります。ただし、額は人によって逆転するので、退職前に共済組合と市区町村の両方で見込みを聞いて、比べてください。
納めた保険料は、全額が控除される
国税庁のNo.1130によれば、社会保険料控除の対象には、健康保険、国民年金、厚生年金保険、国民健康保険、介護保険などの保険料が含まれ、控除の額はその年に実際に支払った金額または給与から差し引かれた金額の全額です。
| 空白の期間に納めたもの | 社会保険料控除 |
|---|---|
| 国民年金の保険料(本人分) | 全額が対象 |
| 国民年金の保険料(配偶者分。本人が納めた場合) | 全額が対象(生計を一にする配偶者や親族の分を納めた場合も対象、No.1130) |
| 任意継続の掛金 | 全額が対象 |
| 国民健康保険の保険料 | 全額が対象 |
つまり、空白の期間に自分で納めた保険料は、その年の所得から丸ごと引かれます。空白が長い方ほど、この控除は大きくなります。納めた保険料の一部が、税の形で戻ってくると考えてください。
証明書を、どこに出すか
| 状況 | 出す先 |
|---|---|
| 年内に転職先に入社し、年末調整を受ける | 転職先の保険料控除申告書に証明書を添える。No.2674により、控除は按分されず全額が対象 |
| 年をまたいで再就職、または年末調整を受けない | 確定申告で添付 |
国民年金の保険料は、証明書が必須です。No.1130は、確定申告時に保険料の金額を証する書類の添付または提示が必要としています(令和8年分以後は明細書の添付で代替可能とされています)。日本年金機構から届く控除証明書を保管してください。任意継続の掛金と国民健康保険の保険料は、共済組合や市区町村からの証明書や領収書を使います。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、空白の期間の保険料で効いてくる点は3つです。
1. 健康保険は、任意継続か国民健康保険かを退職前に比べる
任意継続は退職の日から20日以内に申出。扶養の人数と退職の年の所得で、有利なほうが変わります。
2. 納めた保険料は全額が控除される
証明書を保管し、転職先の年末調整か確定申告に出してください。
3. 空白がなければ、この記事の話は起きない
月末退職・翌月1日入社なら、年金も健康保険も転職先に空白なくつながります。入社日の調整ができるなら、それが最も手間の少ない形です。
手続きと期限
| 手続き | 期限 | 場所 |
|---|---|---|
| 任意継続組合員の申出 | 退職の日から起算して20日を経過する日まで(第144条の2第1項) | 共済組合 |
| 任意継続の初回の掛金の払込み | 払込期日まで。遅れると任意継続にならなかったものとみなされる(第4項) | 共済組合の指定する方法 |
| 国民健康保険の加入 | 資格喪失後、速やかに | 市区町村 |
| 国民年金の第1号被保険者の届出 | 退職日の翌日から14日以内 | 市区町村 |
| 社会保険料控除の申告 | 転職先の年末調整の締切、または確定申告 | 転職先・税務署 |
期限が3つ並びます。任意継続は20日、国民年金は14日、初回の掛金は払込期日。退職の直後に集中するので、退職日が決まった時点でカレンダーに書いておいてください。
誤解されやすい点
「空白の期間は、健康保険に入らなくてもよい」と思い込む
国民健康保険は資格喪失後に加入の義務があり、任意継続は20日の期限があります。無保険の期間を作ると、医療費が全額自己負担になります。
「任意継続の掛金は在職中と同じ額」と思い込む
自治体の負担金に相当する分も本人が払うので、在職中のおよそ2倍が目安です(第144条の2第2項)。
「空白の期間の保険料は、控除にならない」と思い込む
全額が社会保険料控除の対象です(No.1130)。配偶者の分を納めた場合も対象です。
「証明書がなくても、額を書けば控除される」と思い込む
国民年金は証明書が必須です(No.1130)。日本年金機構からの控除証明書を保管してください。
まとめ
- 退職から入社までの空白の期間は、国民年金の保険料(定額)と、健康保険(任意継続か国民健康保険)の保険料を自分で納めます
- 任意継続組合員は、1年以上組合員であった者が退職の日から20日以内に申し出る仕組みで、期間は2年、掛金は在職中の掛金に自治体の負担金相当を加えた額です(地方公務員等共済組合法第144条の2)。初回の掛金を期日までに払わないと不成立です
- 国民健康保険は前年の所得と世帯の構成で保険料が決まり、扶養の概念がありません。どちらが有利かは人によるので、退職前に両方の見込みを聞いて比べてください
- 空白の期間に納めた保険料は、全額が社会保険料控除の対象です(No.1130)。配偶者の分を納めた場合も対象です
- 証明書は、年内に転職先で年末調整を受けるなら転職先に、受けないなら確定申告に出します。国民年金は証明書が必須です
- 期限は任意継続20日、国民年金14日、初回の掛金は払込期日。退職日が決まったらカレンダーに
よくある質問
任意継続と国民健康保険、どちらが安いですか
人によって逆転するので、一概には言えません。任意継続の掛金は、在職中の掛金に自治体の負担金に相当する額を加えた形で、扶養している家族がいても掛金は変わりません(地方公務員等共済組合法第144条の2第2項)。国民健康保険は前年の所得と世帯の構成で決まり、扶養の概念がなく家族も1人ずつ加入して計算されます。扶養している家族が多い方は任意継続が、単身で退職の年の所得が低い方は国民健康保険が有利になりやすいですが、額は自治体や共済組合によって違います。退職前に、共済組合と市区町村の両方に見込みを聞いて、並べて比べてください。任意継続の申出は退職の日から20日以内なので、比べる時間は退職前に取っておく必要があります。
空白の期間に納めた保険料は、どのくらい税が戻りますか
納めた保険料の全額が所得から控除され、その分に税率をかけた額が戻る形です。社会保険料控除は、その年に実際に支払った保険料の全額が対象です(No.1130)。たとえば空白の期間の国民年金と健康保険の保険料が合わせて15万円なら、15万円が所得から引かれ、所得税と住民税の税率に応じた額が減ります。戻る額は、その年の所得と税率で変わるので、ここでは出せません。年内に転職先で年末調整を受けるなら12月の給与で精算され、確定申告なら還付として戻ります。証明書を出さなければ控除されないので、日本年金機構からの控除証明書と、共済組合や市区町村の証明書を保管してください。
配偶者の国民年金の保険料も、私が納めれば控除になりますか
なります。No.1130によれば、社会保険料控除は、納税者本人だけでなく、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族の負担すべき社会保険料を支払った場合も対象です。退職で配偶者が第3号被保険者の資格を失い、第1号被保険者として保険料が発生した場合、その保険料をあなたが納めれば、あなたの社会保険料控除に含められます。控除証明書は配偶者宛てに届くので、保管して、あなたの年末調整か確定申告に添えてください。配偶者の切替えの手続きは退職時の年金の手続きに書いています。個別の扱いは税務署で確認を。