制度とお金 / 年金
退職日と加入月のずれに注意する
退職日を「3月31日」にするか「3月30日」にするか。この1日で、3月の扱いが制度ごとに変わります。
しかも、制度によって数え方が逆です。年金と共済の掛金は「月末に在籍していたか」で決まり、退職手当の勤続は「退職日の属する月まで」で数えます。同じ3月が、年金では数えられず、退職手当では数えられる、ということが起きます。
この記事では、退職日の置き方で、その月の扱いがどう変わるかを、制度ごとに条文で整理します。年金は個別性が高い分野なので、制度の骨を書きます。自分の場合は、共済組合、人事の担当課、年金事務所で確認してください。重なりと抜けの対応は過払い・未納が出たときの対応に書いています。
制度ごとに「月」の数え方が違う
まず、全体を1つの表で見ます。3月31日(月末)に退職した場合と、3月30日(月末の前日)に退職した場合で、3月がどう扱われるかです。
| 制度 | 数え方の骨 | 3月31日退職 | 3月30日退職 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金(共済)の被保険者期間 | 取得月から喪失月の前月まで(厚生年金保険法第19条) | 3月まで数える | 2月まで。3月は国民年金の月 |
| 共済組合の掛金 | 取得月から喪失月の前月まで(地方公務員等共済組合法第114条) | 3月分まで徴収 | 2月分まで。3月分は徴収されない |
| 国民年金の被保険者期間 | 取得月から喪失月の前月まで(国民年金法第11条) | ── | 3月から第1号被保険者(月末までに入社しなければ) |
| 退職手当の勤続期間 | 採用月から退職した日の属する月まで(国家公務員退職手当法第7条第2項) | 3月まで数える | 3月まで数える(同じ) |
年金と共済の掛金は「月末に在籍していたか」、退職手当は「退職日の属する月」。この2つの数え方の違いが、ずれの正体です。
なぜ「翌日」に喪失するのか
年金と共済の側の数え方の根は、資格喪失の日にあります。厚生年金保険法第14条は、被保険者が事業所に使用されなくなったときなどに「その日の翌日」に資格を喪失すると定めています。退職日ではなく、退職日の翌日です。
そして第19条第1項は、被保険者期間を「被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月まで」算入すると定めています。
- 3月31日退職 → 喪失日は4月1日 → 4月の前月=3月まで
- 3月30日退職 → 喪失日は3月31日 → 3月の前月=2月まで
月末に退職すれば、その月は最後まで被保険者なので数えられ、月の途中で退職すれば、月末に被保険者でないので数えられない。この形です。共済組合の掛金も、地方公務員等共済組合法第114条第1項が「組合員の資格を取得した日の属する月からその資格を喪失した日の属する月の前月までの各月」について徴収すると定めており、同じ数え方です。
月の途中で退職すると、その月の掛金は徴収されません。その代わり、その月は国民年金の第1号被保険者として保険料を自分で納める月になります(月末までに入社しない場合)。
退職手当は「退職日の属する月まで」
退職手当の側は逆です。国家公務員退職手当法第7条第2項は、勤続期間の計算を「職員となつた日の属する月から退職した日の属する月までの月数」によると定めています。退職日の属する月が、丸ごと1か月として数えられます。
- 3月31日退職 → 3月まで
- 3月30日退職 → 3月まで(同じ)
- 4月1日退職 → 4月まで(1か月増える)
退職手当では、月の途中で退職しても、その月は数えられます。さらに、4月1日に退職すれば、4月も1か月と数えられます。年金の側では4月1日退職は「3月31日に在籍」と同じ扱いで、退職手当の側では1か月増えるという、逆方向のずれです。詳しくは勤続年数が支給率に与える影響に書いています。
4つの場面で見る
| 退職日 | 年金・共済の掛金 | 国民年金(入社が翌月以降の場合) | 退職手当の勤続 |
|---|---|---|---|
| 3月30日(途中) | 2月まで。3月分の掛金なし | 3月から第1号被保険者 | 3月まで |
| 3月31日(月末) | 3月まで。3月分の掛金あり | 4月から第1号被保険者 | 3月まで |
| 4月1日 | 3月まで(喪失日は4月2日、その前月まで)。4月分の掛金なし | 4月から第1号被保険者 | 4月まで |
| 4月15日(途中) | 3月まで。4月分の掛金なし | 4月から第1号被保険者 | 4月まで |
4月1日退職の行が、いちばんずれの大きい場面です。4月1日に退職すると資格喪失日は4月2日で、被保険者期間は喪失月(4月)の前月である3月までです。4月1日の1日だけ在籍しても、4月は厚生年金の期間になりません。共済の掛金も4月分は徴収されず、月末までに入社しなければ4月は国民年金の第1号被保険者の月です。ただし、退職手当では4月が1か月として数えられます。年金では増えず、退職手当では増える——逆方向のずれです。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、退職日の置き方で効いてくる点は3つです。
1. 月末退職なら、その月まで年金と共済の掛金が続く
翌月1日に入社すれば、空白なく厚生年金がつながります。月の途中で退職すると、その月は国民年金の月です。
2. 退職手当は退職日の属する月まで数える
月の途中でも、その月は勤続に入ります。4月1日退職は退職手当で1か月増えますが、年金では増えません。
3. 入社日との組合せで、空白の月が決まる
退職の月と入社の月の両方について、上の表で「どの制度の月か」を判定してください。詳しくは退職時の年金の手続きに書いています。
手続きと期限
退職日の設定そのものに、法律上の期限はありません。ただし、退職日が決まった後の手続きには期限があります。
| 場面 | 手続き | 期限 |
|---|---|---|
| 月の途中で退職し、翌月以降に入社 | 退職の月の国民年金の届出 | 退職日の翌日から14日以内に市区町村 |
| 月末に退職し、翌月1日に入社 | 市区町村の手続きは原則不要 | ── |
| 退職手当の勤続の月数を確かめたい | 人事の担当課に照会 | 退職の意思を伝える前でも制度の照会として可 |
退職日を人事に伝える前に、上の表で4つの制度の扱いを確かめてください。伝えた後に動かすのは、周囲への影響が大きくなります。
誤解されやすい点
「退職日の属する月は、どの制度でも同じ扱い」と思い込む
年金と共済の掛金は月末在籍、退職手当は退職日の属する月です。数え方が違います。
「月の途中まで働けば、その月の年金は厚生年金」と思い込む
月末に在籍していなければ、その月は国民年金の月です(厚生年金保険法第14条・第19条)。
「4月1日退職は全部で1か月得をする」と思い込む
退職手当では1か月増えますが、年金では4月は厚生年金の期間に入りません。逆方向のずれです。
「月の途中で退職すると、その月の掛金が二重になる」と思い込む
共済の掛金は喪失月の前月までなので、途中退職の月の共済の掛金は徴収されません。二重ではなく、国民年金の側に移ります。
まとめ
- 厚生年金の資格は退職日の翌日に喪失し(厚生年金保険法第14条)、被保険者期間は喪失月の前月までで数えます(第19条)。月末退職ならその月まで、途中退職ならその月は入りません
- 共済組合の掛金も喪失月の前月まで徴収されます(地方公務員等共済組合法第114条)。途中退職の月の掛金は徴収されず、その月は国民年金の第1号被保険者の月になります(国民年金法第11条)
- 退職手当の勤続は退職日の属する月まで数えます(国家公務員退職手当法第7条第2項)。4月1日退職は退職手当で1か月増えますが、年金では増えません
- 退職日を決めるときは、年金・共済の掛金・国民年金・退職手当の4つを1行に並べて、ずれを確かめてください
- 月末退職・翌月1日入社が最も空白が少ない形です
よくある質問
4月1日付で退職すると、何が変わりますか
退職手当の勤続が1か月増え、年金は増えません。国家公務員退職手当法第7条第2項により、勤続は退職した日の属する月まで数えるので、4月1日退職なら4月が1か月として数えられます。一方、厚生年金保険法第14条により資格喪失日は4月2日で、第19条により被保険者期間は喪失月(4月)の前月である3月までです。4月は厚生年金の期間に入らず、共済の掛金も徴収されず、月末までに入社しなければ国民年金の第1号被保険者の月になります。退職手当の側の1か月と、年金の側の扱いを両方見て決めてください。自治体の条例で退職手当の数え方が国と違う場合もあるので、人事の担当課に確認してください。
月の途中で退職したら、その月の共済の掛金は給与から引かれますか
引かれません。地方公務員等共済組合法第114条第1項は、掛金を組合員の資格を取得した日の属する月から資格を喪失した日の属する月の前月までの各月について徴収すると定めています。月の途中で退職すると資格喪失日はその月の中にあるので、その月の掛金は徴収されません。その代わり、その月は国民年金の第1号被保険者の月になり(月末までに入社しない場合)、国民年金の保険料を自分で納めます。健康保険(短期給付)の側も同じ月の数え方で、退職の月から任意継続か国民健康保険に切り替える形になります。詳しくは共済組合に確認してください。
月末退職と月の途中の退職では、どちらが有利ですか
一概には言えません。月末退職なら、その月まで厚生年金の期間と共済の掛金が続き、翌月1日に入社すれば空白がありません。月の途中の退職なら、その月の共済の掛金は徴収されませんが、国民年金の保険料を自分で納める月になり、厚生年金の期間には入りません。退職手当はどちらでもその月まで数えます。転職先の入社日が決まっていれば、それに合わせて空白が最も少ない退職日を選ぶのが順当です。給与の締めや期末手当の基準日も関わるので、上の表に自分の日付を当てはめて、人事の担当課と共済組合に確認してください。期末手当の側は年度途中に辞めると退職手当はどうなるかに書いています。