制度とお金 / 共済
財形貯蓄の扱い
給与から天引きで積み立てている財形貯蓄は、退職すると天引きの元になる給与がなくなるので、積立が止まります。貯めた分がなくなるわけではありませんが、そのまま放置すると、財形年金と財形住宅は非課税の扱いを失うことがあります。
財形貯蓄は、共済組合の共済貯金とも、互助会の積立とも別の制度です。勤労者財産形成促進法に基づき、勤務先を通じて金融機関と結んだ契約で、転職先に財形制度があれば、契約を引き継げます。
この記事では、財形貯蓄の3種類と、退職・転職でどうなるか、非課税を失わないための期限を整理します。契約の細目は金融機関と勤務先の制度によって違うので、自分の契約は、自治体の給与の担当課と、預入先の金融機関で確かめてください。共済貯金は退職時の共済の手続きに、互助会の積立は互助会・共済会の脱退に書いています。
財形貯蓄とは——公務員も対象
勤労者財産形成促進法第2条第1号は、勤労者を職業の種類を問わず、事業主に雇用される者と定めています。第4条は、いくつかの条について国家公務員と地方公務員を除いていますが、財形貯蓄契約を定める第6条は除外されていません。地方公務員も、自治体を通じて財形貯蓄契約を結べます。
第6条により、財形貯蓄契約は、勤労者が金融機関等と結ぶ、3年以上の期間にわたって定期に預入等をする契約で、事業主(自治体)が給与から天引きして払い込む仕組みです。契約の当事者は本人と金融機関で、自治体は天引きと払込みを担います。ここが、退職時の扱いを理解する鍵です。
3種類の財形貯蓄
| 種類 | 目的 | 要件 | 非課税 |
|---|---|---|---|
| 一般財形貯蓄 | 使途自由 | 3年以上の積立。年齢の制限なし。複数の契約可 | なし(利子に課税) |
| 財形年金貯蓄 | 60歳以降の年金として受取り | 契約時55歳未満、5年以上の積立、1人1契約。60歳以降5年以上にわたって受取り | 財形住宅と合わせて元利合計550万円まで、利子等が非課税 |
| 財形住宅貯蓄 | 持家の取得・増改築 | 契約時55歳未満、5年以上の積立、1人1契約 | 同上 |
財形年金と財形住宅は、目的外で払い出すと非課税の扱いを失い、利子に課税されます(災害、一定額を超える医療費、失業などの事由で非課税のまま払い出せる場合があります)。一般財形は、目的の制限がなく、いつでも払い出せますが、もともと非課税ではありません。
退職で起きること
| 起きること | 一般財形 | 財形年金・財形住宅 |
|---|---|---|
| 積立の停止 | 給与の天引きがなくなるので止まる | 同じ |
| 残高 | そのまま金融機関に残る | 同じ |
| 放置した場合 | 利子に課税されるだけで、不利益はない | 最後の天引きによる預入から、次の預入がないまま2年が経過すると、非課税の扱いを失う |
| 払出し | いつでも可 | 目的外の払出しは課税 |
財形年金・財形住宅を持っている方は、退職から2年が期限です。この2年の間に、転職先で継続するか、金融機関を移して積立を再開するか、目的に沿って払い出すかを決めます。
転職先で継続する——2つのルート
厚生労働省の案内では、転職時の扱いは次のとおりです。
| 転職先の状況 | できること | 手続き |
|---|---|---|
| 転職先に財形制度があり、同じ金融機関を取り扱っている | 同じ契約を継続できる | 転職先を通じて勤務先異動申告書などを提出 |
| 転職先に財形制度はあるが、同じ金融機関の取扱いがない | 退職等の日から2年以内に、別の金融機関に預け替えて継続できる | 転職先と新旧の金融機関で手続き |
| 転職先に財形制度がない | 継続できない。財形年金・財形住宅は2年で非課税を失うので、払出しか、課税扱いのまま保有かを決める | 金融機関で手続き |
転職先に財形制度があるかどうかは、求人票には書かれていないことが多いので、内定の段階で人事に聞いてください。財形制度がない企業は珍しくありません。財形年金・財形住宅の残高が大きい方は、転職先を選ぶときの1つの材料になります。
転職先で継続する場合も、退職から入社までの空白の期間は積立が止まります。財形年金・財形住宅の「5年以上の積立」の要件は、継続の手続きをすれば通算されるので、空白があること自体で要件を失うわけではありません。細目は金融機関に確かめてください。
財形持家融資との関係
財形貯蓄を一定期間続けている方は、財形持家融資(財形貯蓄の残高に応じた住宅資金の融資)を受けられることがあります。地方公務員の場合、この融資は共済組合等を通じて行われる形が法律に定められています(第15条第2項の共済組合等が行う貸付け)。財形持家融資を受けている方は、退職で共済組合の組合員でなくなるため、融資の扱い(継続か、償還か)を共済組合に確かめてください。共済組合の貸付の精算と考え方は似ています(共済貸付の残債はどうなるか)。
転職するとどうなるか
転職を考えている方にとって、財形で効いてくる点は3つです。
1. 転職先に財形制度があるかを、内定の段階で聞く
財形年金・財形住宅の残高が大きい方ほど、効きます。制度がなければ、2年以内に預け替えるか、払い出すかです。
2. 空白の期間は積立が止まるが、継続の手続きをすれば通算される
退職から入社までの空白があっても、転職先で勤務先異動申告書などを出せば、同じ契約が続きます。
3. 一般財形は、放置しても不利益がない
もともと課税なので、退職で扱いは変わりません。使途自由なので、退職後の資金として払い出すこともできます。
手続きと期限
| 順序 | 手続き | 期限 | 場所 |
|---|---|---|---|
| 退職を考え始めたら | 財形の種類と残高、金融機関を確かめる | 最初に | 給与明細・金融機関 |
| 内定の段階 | 転職先の財形制度の有無と、取扱いの金融機関を聞く | 内定後 | 転職先の人事 |
| 退職時 | 自治体の給与の担当課に、退職による天引きの停止と、退職の日を金融機関に伝える手続きを確かめる | 退職日 | 自治体の給与の担当課 |
| 入社後 | 転職先に制度があれば、勤務先異動申告書などで継続 | 入社後速やかに | 転職先の人事・金融機関 |
| 退職から2年以内 | 転職先に同じ金融機関の取扱いがなければ、別の金融機関に預け替え | 退職等の日から2年 | 新旧の金融機関 |
| 2年以内 | 転職先に制度がなければ、財形年金・財形住宅の払出しか保有かを決める | 2年 | 金融機関 |
| 財形持家融資がある場合 | 退職時の扱いを共済組合に確かめる | 退職前 | 共済組合 |
誤解されやすい点
「退職すると財形貯蓄は解約される」と思い込む
積立が止まるだけで、残高は残ります。財形年金・財形住宅は2年以内に手続きをすれば継続できます。
「転職先ならどこでも財形を引き継げる」と思い込む
転職先に財形制度があることが前提です。なければ引き継げません。
「公務員は財形の対象外」と思い込む
第6条の財形貯蓄契約は公務員にも適用されます(第4条の除外は他の条に限られます)。
「非課税を失うと残高が減る」と思い込む
減りません。利子に課税されるだけです。慌てて目的外で払い出すほうが、課税の面では同じか不利です。
まとめ
- 財形貯蓄は、勤労者財産形成促進法第6条に基づき、本人が金融機関と結び、勤務先が給与から天引きして払い込む契約です。地方公務員も対象です(第2条、第4条)
- 3種類のうち、財形年金と財形住宅は、合わせて元利合計550万円までの利子等が非課税。一般財形は課税で、使途は自由です(厚生労働省)
- 退職で積立は止まりますが、残高は残ります。財形年金・財形住宅は、最後の預入から2年以内に次の預入がないと非課税を失います
- 転職先に財形制度があれば、勤務先異動申告書などで継続でき、同じ金融機関の取扱いがなくても退職等の日から2年以内なら別の金融機関に預け替えできます
- 転職先に財形制度がなければ引き継げません。内定の段階で人事に有無を聞いてください
- 財形持家融資を受けている方は、退職時の扱いを共済組合に確かめてください
よくある質問
財形住宅貯蓄を続けています。転職先に財形制度がない場合、どうすればよいですか
2年以内に、払い出すか、課税扱いのまま保有するかを決めます。転職先に財形制度がなければ、財形住宅貯蓄の契約は継続できません。最後の天引きによる預入から2年が経過すると、非課税の扱いを失い、利子に課税されます。残高そのものは減りません。持家の取得の予定が近いなら、目的に沿った払出し(持家の取得・増改築)は非課税のまま可能なので、金融機関に要件を確かめてください。予定が遠いなら、2年以内に目的外で払い出しても、そのまま保有して課税扱いになっても、利子に課税される点は同じです。慌てて払い出す必要はなく、資金の使い道で決めてください。なお、転職先が財形制度を将来導入する可能性や、その後さらに転職する可能性を考える方もいますが、2年の期限は最後の預入から数えるので、その間に預入がなければ扱いは変わりません。
退職から入社まで3か月あります。財形年金貯蓄の積立が3か月止まると、要件に影響しますか
継続の手続きをすれば、影響しません。財形年金貯蓄の「5年以上の積立」の要件は、転職先で勤務先異動申告書などの手続きをして同じ契約を続ければ、前後の期間を通算して数えます。空白の3か月は積立がないだけで、契約が切れるわけではありません。期限は、最後の預入から2年なので、3か月の空白は十分に収まります。ただし、転職先に財形制度があり、同じ金融機関の取扱いがあることが前提です。取扱いがなければ、2年以内に別の金融機関に預け替えます。細目は契約している金融機関によって異なることがあるので、退職前に金融機関に「転職の空白が3か月ある場合の手続き」を聞いておくと、入社後に迷いません。
一般財形貯蓄は、退職後の生活費に使ってよいですか
使えます。一般財形貯蓄は使途の制限がなく、いつでも払い出せます。もともと利子に課税されているので、退職で税の扱いが変わることもありません。退職から入社までの空白の期間の生活費や、健康保険と国民年金の保険料の支払いに充てる資金として、共済貯金の払戻金や退職手当と並べて資金計画に入れてください(退職手当をあてにした資金計画の考え方)。転職先に財形制度があれば、残高を残したまま継続して積み立てることもできます。財形年金・財形住宅と違って、期限を気にする必要がないので、一般財形だけの方は、退職時の手続きは自治体の給与の担当課への天引きの停止の確認だけで足ります。