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初任給の決まり方|学歴と職歴の換算
採用されたとき、辞令に「1級25号給」のように書かれていた。同期と同じ額だと思っていたら、大学院卒の人や民間から来た人は号給が違った。公務員の初任給は「一律いくら」ではなく、採用時にどの級・どの号給に決めるかで決まります。
この記事では、初任給を決める条文の組み立て、学歴の区分による違い、職歴などの経験年数がどう加わるか、転職を考えるときにどう読めばよいかを、国の人事院規則9-8を例に整理します。
地方公務員の初任給は、各自治体が給与条例と規則(初任給の基準を定めた規則など)で定めます。この記事では特定の自治体の号給や額を示しません。自分の扱いは、所属の条例・規則と人事担当課で確かめてください。本記事は2026年11月時点の公開情報にもとづきます。
初任給は「級」と「号給」を決めること
地方公務員の給与は、職務と責任に応ずるものとされ(地方公務員法第24条第1項)、条例で定めます(同条第5項)。給与に関する条例には、給料表と等級別基準職務表、昇給の基準などを定めることとされています(第25条第3項)。
給料月額は、給料表の上で級と号給の交点として決まります。したがって初任給を決めるとは、採用された人を、どの級のどの号給に置くかを決めることです。表の読み方は給料表の読み方にまとめています。
国では、給与法第8条第4項が「新たに俸給表の適用を受ける職員となつた者の号俸は、人事院規則で定める初任給の基準に従い決定する」としています。その基準が人事院規則9-8です。多くの自治体の初任給の決め方は国の仕組みを参考にしているため、以下では国の条文を例に見ていきます。
| 決めること | 国の条文 | 中身 |
|---|---|---|
| 職務の級 | 人事院規則9-8第11条 | 能力等を考慮し、職務に応じて決める |
| 号俸 | 同第12条 | 試験の区分や学歴の区分ごとの初任給基準表による |
| 表の当てはめ方 | 同第13条 | 俸給表、職種、試験、学歴免許等の区分に応じて適用する |
| 経験年数による加算 | 同第15条・第15条の2 | 学歴取得後の経験を換算し、号俸に加える |
初任給基準表——試験と学歴で出発点が決まる
採用試験の結果で採用された人の級と号俸は、別表第二の初任給基準表で、その人の試験の区分に対応する欄の級・号俸に決めるとされています(第11条第2項、第12条第1項第1号)。行政職俸給表(一)の表には、たとえば次のように書かれています。
| 試験の区分(行政職俸給表(一)) | 初任給欄 |
|---|---|
| 総合職(院卒) | 2級11号俸 |
| 総合職(大卒) | 2級1号俸 |
| 一般職(大卒) | 1級25号俸 |
| 一般職(高卒) | 1級5号俸 |
| その他・高校卒 | 1級1号俸 |
同じ1級でも、出発点の号俸が試験と学歴の区分で違うことが分かります。表の当てはめは、俸給表の別、職種欄・試験欄・学歴免許等欄の区分に応じて行うとされ(第13条第1項)、学歴免許等の区分は別表第三の学歴免許等資格区分表によるのが原則です(同条第4項)。
試験によらずに採用された人で経験年数が1年に満たない場合は、初任給基準表の職種欄・試験欄と学歴免許等欄の区分に対応する級・号俸に決めるとされています(第11条第4項、第12条第1項第3号)。
学歴の差は「経験年数」に置き換えて調整する
初任給基準表が想定している学歴(基準学歴)と、本人の実際の学歴がずれることがあります。たとえば大学卒を基準とする区分に、大学院を修了した人が当てはめられる場合です。
人事院規則9-8第15条の2第2項は、こうした場合に、別表第五の経験年数調整表に定める年数を経験年数に加えたり減じたりするとしています。表には、たとえば次のような年数が並んでいます。
| 本人の学歴 | 基準学歴が大学卒の区分に対して |
|---|---|
| 博士課程修了 | +5年 |
| 修士課程修了 | +2年 |
| 大学4卒 | 調整なし |
| 短大2卒 | -2年 |
| 高校3卒 | -4年 |
学歴の違いを、そのまま別の表に当てはめるのではなく、「何年分の経験に当たるか」に置き換えて調整するという考え方です。どの区分が基準になるかは、初任給基準表の学歴免許等欄と人事院の定めによります(第15条の2第2項)。
職歴などの経験年数は号俸に加わる
学歴を取得した後に、民間企業などで働いた期間がある人もいます。人事院規則9-8第15条の2第1項は、経験年数を、最も新しい学歴免許等の資格を取得した時以後の年数を、別表第四の経験年数換算表で換算して得た年数としています。
採用試験の結果で採用された人のうち経験年数を有する人の号俸は、第15条第1項で、初任給基準表の号俸に、経験年数の月数を12月で割った数(1未満の端数は切り捨て)に、別表第七の四イの昇給号俸数表のC欄上段の号俸数を掛けた数を加えた号俸とすることができるとされています。そのC欄上段の号俸数は4です。
つまり国では、換算後の経験年数1年につき4号俸を加えることができるという組み立てです。毎年の昇給で良好な成績の場合の号俸数と同じ数を使っており、「採用前の経験を、採用後に昇給を重ねた分に置き換える」考え方になっています。昇給の仕組みは昇給の記事にまとめています。
経験者採用試験で採用された人や、経験年数が1年以上ある人を選考で採用する場合は、部内の他の職員との均衡を踏まえて級と号俸を決める別の規定があります(第11条第3項、第12条第1項第2号)。民間での経験が換算表のどの区分に当たるか、経験者採用の場合の決まり方は民間経験の初任給への反映で詳しく扱っています。
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転職するとどうなるか
1. 公務員の初任給の物差しは民間に持ち越せない
民間企業に移ると、初任給基準表も経験年数換算表も使われません。提示額は会社の等級制度と個別の判断で決まります。比べるときは、号給ではなく年間の受取額で並べます。
2. 公務員に戻る・別の自治体に移るときは換算がもう一度行われる
民間から公務員になる、別の自治体に移るといった場合は、その採用のときに改めて級と号給が決め直されます。そのときに民間での経験がどの程度経験年数として数えられるかは、採用先の規則と運用によります。辞めた後に戻る道は辞めた公務員は戻れるかにまとめています。
3. 初任給調整手当は別の仕組み
地方自治法第204条第2項は、条例で支給できる手当として初任給調整手当を挙げています。国では、医師など採用による欠員の補充が困難な官職などに新たに採用された職員に、期間を限って支給する手当です(給与法第10条の4)。初任給の号給とは別の仕組みです。
手続きと確認のしかた
| 順序 | 確かめること | どこで |
|---|---|---|
| 1 | 採用時の給料表の種類、級、号給 | 採用の辞令、人事給与システム |
| 2 | 自分に当てはめられた試験・学歴の区分 | 所属の初任給の基準を定めた規則、人事担当課 |
| 3 | 採用前の経歴が経験年数として数えられたか | 人事担当課(採用時の経歴の申告にもとづく) |
| 4 | その後の昇給・昇格で今の号給になった経緯 | 昇給・昇格の辞令 |
自治体の規則は例規集で公開されていることが多いですが、経験年数の換算率など細かな運用は、規則の下の要綱や通知で定められている場合があります。分からないときは人事担当課に尋ねるのが確実です。
誤解されやすい点
「初任給は全員同じ」と思い込む
国では、試験の区分や学歴の区分で初任給基準表の出発点が違い、経験年数があれば号俸が加わります(人事院規則9-8第12条・第15条)。同じ年度の採用でも号給が違うことがあります。
「大学院卒は上の級から始まる」と思い込む
国の行政職俸給表(一)では、総合職(院卒)は2級11号俸、一般職(大卒)は1級25号俸というように、試験の区分によって違います。学歴だけで級が決まるわけではありません。
「経験は全部そのまま年数に数えられる」と思い込む
経験年数は、学歴取得後の期間を経験年数換算表で換算した年数です(第15条の2第1項)。期間の種類によって換算率が違います。
「国の換算方法がそのまま自分の自治体にも当てはまる」と思い込む
自治体の初任給の基準は、それぞれの条例・規則で定めます。国を参考にしていても、細部が違うことがあります。
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まとめ
- 初任給を決めるとは、採用時に級と号給を決めること。国では給与法第8条第4項にもとづき、人事院規則9-8の初任給の基準による
- 採用試験の結果で採用された人は、初任給基準表(別表第二)で、試験と学歴の区分ごとの級・号俸が出発点になる(第11条・第12条・第13条)
- 基準学歴とのずれは、経験年数調整表(別表第五)で年数を加減して調整する(第15条の2第2項)
- 学歴取得後の経験は経験年数換算表(別表第四)で換算し、国では1年につき4号俸を加えることができる(第15条、別表第七の四イ)
- 自治体の初任給の基準は条例・規則で定める。自分の区分と換算の結果は人事担当課で確かめる
よくある質問
自分の初任給がどう決まったかは教えてもらえますか
採用時の辞令には、給料表の種類と級・号給が記載されるのが一般的です。どの試験・学歴の区分に当てはめられたか、採用前の経歴がどのように経験年数として数えられたかは、辞令だけでは分からないことがあります。その場合は、人事担当課に尋ねてください。採用時に提出した経歴の申告をもとに決められているので、記録が残っていることが多いです。自治体の初任給の基準を定めた規則が例規集で公開されていれば、それと突き合わせて読むこともできます。
採用後に学位を取ったら号給は変わりますか
国の人事院規則9-8第43条は、新たに職員となったとした場合に今の号俸より上位の号俸を初任給として受けるべき資格を取得したときなどに、人事院の定めるところにより上位の号俸に決定できるとしています。「できる」という規定で、具体的な決め方は人事院の定めによります。自治体では条例・規則と運用によるので、取得前に人事担当課へ、号給に反映される扱いがあるか、申請の手続きが必要かを確かめておくのが確実です。
初任給の決まり方は退職手当にも影響しますか
退職手当の基本額は、退職日の給料月額を基礎に計算されるのが一般的です。初任給で決まった号給は、その後の昇給・昇格を経て退職時の給料月額につながるので、間接的には影響します。ただし退職手当の額は勤続年数や退職理由、調整額などで変わります。仕組みは基本額の計算の考え方にまとめています。個別の見込み額は、所属の人事担当課や退職手当の担当で確かめてください。